4 海外の環境保全への援助等
我が国は開発途上国への援助の面でも海外の環境保全に協力している。ここではいくつかの具体例をみていくこととする。
(1) パンタバンガン林業開発
本事業はフィリピンにおける森林造成に我が国が協力している例である。マニラ平野の水源となっているパンタバンガン地域は過度の移動焼畑耕作・放牧等のため草原状の無立木地となっているが、フィリピン政府はこの地域における造林を計画し、森林造成及び林地保全技術の開発改良及びその移転を我が国に要請した。これに対し、51年から国際協力事業団が林野庁等の協力を得て、専門家の派遣、研修員の受け入れ、機材の供与を行い、フィリピン国技術者への技術移転等を実施している。
(2) ブラジル鉱山公害防止
本事業はブラジルにおける鉱業活動に基づく公害防止に我が国が協力している例である。
ブラジルは、第2次国家開発計画の一環として、非鉄鉱物資源開発計画を推進しているが、鉱山及び採石場が大都市に隣接しているため、水質汚濁、大気汚染、騒音等各種公害問題が深刻になってきている。ブラジル政府はこれらの鉱山活動に由来する公害を防止するための総合的対策を推進するべく、我が国に公害の実態調査、規制のシステム等につき技術協力を要請した。これに対し、国際協力事業団が通産省及び民間の協力を得て、専門家の派遣、研修員の受入れ、機材の供与を行っている。
このようにして、我が国の国際協力は次第に環境保全の分野でも展開されてきている。他国に例を見ない環境汚染を体験し、その対策について深い経験を有している我が国に対し、この分野の国際協力について各国から寄せられる期待は大きい。また、国際的な経済活動を通じて、他国の環境問題とも深い関係を有する我が国にとって、環境保全を含む広範な領域において、国際協力を進めていくことが良好で安定した国際関係の樹立につながるものといえよう。