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第3章 環境保全が配慮された社会に向けての新たな展開

 人口増加の高齢化、経済成長率の低下、人口の都市集中の鈍化、産業構造の変化など経済社会はいわゆる「成熟化」の道を歩んでおり、環境行政も新たな展開が求められている。
 環境の状況は、一時期の危機的状況からは一応脱し、全般的には改善を示してきているが、大都市圏を中心に改善が進んでいない分野が残されており、自動車交通等による交通公害問題、あるいは閉鎖性水域の水質汚濁等の緊急に対応を要する問題も生じている。また、近年、このように発生源が不特定又は多岐にわたる環境問題が増加していること、さらに、公害からの健康の保護と生活環境の保全にとどまらず、快適な環境への国民のニーズが高まっていること等から、発生源規制と併せて、広く土地利用、経済活動、生活のあり方を含めた総合的、多角的対応が必要となっている。
 このため、環境対策の視野を拡大し、より質の高い環境を目指して国、地方公共団体の各般の関連対策分野において、相互に密接な連携調整を図りつつ、環境の保全整備に関する施策を推進することが重要となっている。
 このような方向に沿って環境政策を着実に進め、環境保全の効果を一層高めていくための基礎は、まず公害防止のための排出規制等を実施することであり、また自然環境を体系的に保全し、身近な緑を保全・創造していくことである。
 同時に、環境問題の根本的な解決のためには、環境汚染の未然防止を図ることが重要であり、適切かつ円滑な環境影響評価を実施することが必要である。
 交通公害問題や閉鎖性水域の汚濁などの複雑化した問題に対しては、社会資本整備や土地利用の調整をも含めた多角的な取組みをより一層推進することである。
 さらに、環境問題の特性に応じ、日常生活に密着した問題に対するよりきめの細かな対策、公害防止計画などの計画的な対策、各種の助成措置等の誘導策などを適切に組み合わせ、総合的な環境保全の効果をあげていくことが肝要である。
 今後も、国民生活の向上を図るため、各種の環境利用が高密度化し、広域化していくことが予測される。そのため、地域環境の特性を把握するとともに、それぞれの利用者問題の調整を図ることが重要となっている。土地や水等の環境資源の利用の調整に当たっては、地域の自然的、社会的条件を考慮し、その利用を進めようとする各種の計画について環境保全上の問題点をあらかじめ把握しておくことが必要である。
 また、各地で高まっている快適環境づくりの動きを、国としても積極的に支援し、その輪を全国に広げていくことが必要である。さらに、自然に対する正しい理解を広めるためにも、身近な自然とふれあう機会を確保していくことが不可欠である。
 このような観点から、それぞれの主体が、よりよい環境に向けて努力を続けることにより、環境保全が配慮された社会、言わば環境保全型社会を形成し、安全で安心できる国民生活と、社会の長続きする繁栄の起訴を確保していくことが望まれる。
 なお、国連環境特別委員会の設置など国際化する環境問題に関する対応方向についてもみていく。

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