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第4節 

1 社会資本の整備と環境への配慮

(1) 社会資本の整備の動向
 我が国の社会資本整備の状況をみると、第2-4-1表のとおりストックは着実に増大してきている。
 また、社会資本整備の比重をみると、高度経済成長期においては、工業用水・用地、道路、港湾、鉄道などに重点が置かれた。
 一方、近年は生活環境に関連する基盤整備の比重が着実に増大している(第2-4-2図)。たとえば下水道をみると、46年から57年までの12年間に名目国民総生産は3.5倍、政府固定資本形成は3.9倍であったのに対し、下水道投資額は8.9倍となっている。また、一人当たり都市公園面積は、42年の2.4平方メートルから56年4.3平方メートルへと増加している。


(2) 環境への配慮の必要性
 社会資本は、国土と国民の安全を守り、経済社会の活力を維持し、快適な国民生活を実現するための基盤となるべきものである。しかしながら、社会資本の整備に伴って環境問題が生じた例もある。
 とりわけ、大規模な道路建設、埋立事業、ニュータウン開発等は自然の改変を伴い、環境に及ぼす影響も大きい。また、それが供用された場合にも生産、消費、運輸活動等を通じ継続的に影響を与えることになる。たとえば、道路、飛行場、新幹線鉄道等の交通施設の供用に伴って公害問題が生じている例がみられている。兵庫県の国道43号、愛知県の国道1号岡崎地区、東京都の都道環状7号線等の沿道の騒音、振動、大気汚染、大阪国際空港の航空機騒音、名古屋市内の新幹線鉄道沿線の騒音、振動などはその顕著な例である。
 また、30年代後半から40年代を中心に、工場、事業場が集中している地域とおいて深刻な大気汚染や水質汚濁が問題となった。たとえば、30年頃から我が国で最初のコンビナート型開発を行なった四日市地域では、34年頃から遂次工場の操業が開始されたが、36年頃からいわゆる四日市ぜん息や異臭魚問題などを引き起こした。
 各種の地域開発、公共事業等を進めるに当たっては、これらの開発や公共事業が環境問題を引き起こさないよう未然の防止策を講じる必要がある。
 このため、政府は、47年6月「各種公共事業に係る環境保全対策について」を閣議了解し、国の行政機関はその所掌する公共事業について、事業実施主体に対し、あらかじめ必要に応じ、その環境に及ぼす影響の内容及び程度、環境破壊の防止策、代替案の比較検討などを含む調査研究を行わせ、所要の措置をとるよう指導することとした。また、地方公共団体においても国に準じた措置が講ぜられるよう要請した。
 近年においては、環境の保全に十分配慮した社会資本の整備も進んでいる。たとえば、道路の整備に当たっては、遮音壁の設置等種々の対策が実施されている。

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