1 人口構成の高齢化
我が国の人口構成は急速に高齢化しつつあり、65歳以上の推計人口は昭和58年9月現在で1,166万人、全人口の9.8%を占めるに至っており、今後とも高齢者人口数、構成比とも増加を続けることが予想される。このように社会全体が高齢化することは環境問題へも様々な影響を及ぼすと考えられる。
高齢化は山村地域などの過疎地帯でまず先行的に進行した。これらの地域では若年層の流出を中心とした過疎化と高齢化等の進行に伴って、地域の社会基盤が弱体化したことや林業の経営条件の悪化により経営意欲が減退したこと等から農地や森林の管理が行き届かなくなり、その保全に支障が生じている。今後は都市地域においても、高齢化が進行するものと予測される(第2-1-1表)。
一般に高齢者は生活環境の変化に対する適応が遅く、環境汚染物質に対する感受性は高く、抵抗力は弱い。
他方、高齢者は落ちついたうるおいのある環境に対する希求も高い。また、相対的に余暇時間にも恵まれており、地域奉仕活動への参加割合も高い。「老人の地域奉仕活動に関する調査」(総理府、57年)により、高齢者の地域奉仕活動への参加状況をみると、過去1年間に参加したことのある高齢者(60歳以上)は、39.7%であり、特に活動の種類別では、地域環境保全への参加率が30.5%で、その他の団体活動の世話や地域福祉活動に比べ高くなっている。高齢者の中には環境保全についても豊かな知識、経験を持っている人も多い。祖先から引き継いできた環境を、その恵みが将来にわたって享受できるよう将来の世代へ残していくことが現代の我々の責務であり、その際高齢者の知識や経験が生かせる社会的な仕組を作っていくことが重要である。