世界人口の増大と人間活動の規模の拡大を背景とした大気中の二酸化炭素濃度の増加、熱帯雨林の減少等の地球的規模の環境問題については、47年6月に開催された国連人間環境会議(ストックホルム)の勧告に基づき、UNEPが中心となって取り組んでいる。一方、米国においては、カーター大統領(当時)の命により、これらの問題を含め、地球の全般的な環境を総合的長期的に展望した「西歴2000年の地球」と題した研究が行われ、55年7月に発表された。
我が国においても鈴木内閣総理大臣(当時)から地球的規模の環境問題に対し我が国がいかに対処すべきかについて、環境庁において検討するようにとの指示が出され、55年9月末には環境庁長官により、学識経験者からなる地球的規模の環境問題に関する懇談会(座長大来佐武郎氏)が設けられた。同懇談会は、地球的規模の環境問題について大局的な見地から検討を行い同年12月20日「地球的規模の環境問題に対する取組みの基本的方向について」と題する報告書を環境庁長官に提出した。この報告書は、地球的規模の環境問題に関し、基本的認識、政策の基本的方向、今後の検討課題等について懇談会の検討結果をまとめたものである。
同懇談会は、環境庁長官の要請を受けて、57年4月8日に「地球的規模の環境問題への国際的取組について−国連人間環境会議10周年に当たって−」と題し、基本的考え方、資源・エネルギーと環境、開発援助と地球環境、地球環境保全のための調査研究と教育、地球環境保全のための国際的枠組という5つの問題について取りまとめた報告書を環境庁長官に提出した。
この報告書を踏まえて、環境庁長官は57年5月ナイロビで開催されたUNEP管理理事会特別会合において日本政府を代表して、地球的規模の環境問題についての国際協力の必要性を強調し、更に21世紀の地球環境の理想像を模索するとともに、これを実現するための戦略を長期的かつ総合的な視点から検討する特別委員会の新設を提案した。
なお、その設置を国連総会に勧告することについては、次回(58年5月)管理理事会まで継続審議されることとなっている。