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第2節 

1 UNEP(国連環境計画)

 UNEPは、47年にトックホルムで開催された国連人間環境会議を契機に、既存の国連システム内の諸機関が行っている環境関係の諸活動を一元的に調整し、かつ、これら諸機関等の環境保全分野での活動を促進することを目的として創設された。
 UNEPは、国連システム内での環境分野の総合的な調整にその活動の主体がおかれているが、その他の国際機関、各国政府、非政府機関とも幅広い協力を行っている。
 UNEPの取り扱っている環境問題は、環境汚染、自然保護等に加え、人口の急増、貧困等に伴う環境問題をも包含し、非常に幅広い分野にわたっている。
 UNEPが実施するプログラムは、世界環境モニタリングシステム、国際環境情報源照会制度、国際有害化学物質登録制度等の環境状況把握からなる環境評価、人間居住、生態系、砂漠化、環境と開発、環境法等からなる環境管理及び情報、教育、研修、技術援助からなる支援措置の3つに大別されている(第10-1-1図)。UNEPに対して、我が国は、当初から理事国としてのUNEPの環境理事会に参画するとともに、環境基金に対し、57年は400万ドル(ソ連の368万ドルを上回り、米国の783万ドルに次いで第2位)を拠出する等多大の貢献を行ってきた。
(1) 管理理事会特別会合
 国連人間環境会議の10周年を記念して、管理理事会特別会合が57年5月10日から、18日まで、ナイロビにおいて、世界105か国から、国家元首3人、70人以上の環境担当大臣等、更に、関連国連機関、報道関係者を含め、およそ、1,200人の出席を得て開催された。我が国からは、原環境庁長官(当時)を首席代表する20人を超える代表団を送った。
 本会合では、各国代表から、各国からみた世界と自国の環境政策のレビューと今後のすう勢、課題等の展望が述べられ、関係の国連機関等の環境問題への取組についての報告がなされた。更にこれらの成果を踏えて、国連人間環境会議行動計画の実施上の主要な成果のレビュー及び次の10年間にUNEPが取り組むべき主要な環境の問題が議論され、ナイロビ宣言、「1982年の環境:回雇と展望」(決議1)等が採択された。
 後者は、いわば次の10年間の行動計画とも言うべきもので、UNEP発足以来、毎年の管理理事会に提出された環境の状況報告文書等の成果を踏まえて本特別会合のために、総合的にとりまとめたものである。この中では、大気、海洋、水、地圏、陸上生物相と生物生産システム、人口と人間居住、健康、エネルギー産業とその他の経済開発、平和・安全保障と環境の10項目について、1970年代初めと1982年の状況を総合的に比較検討し、次の10年間にとるべき行動を提案している。
 この他に、我が国が積極的に提案した、西暦2000年及び、それ以降の環境の展望に係る長期環境戦略に関する特別委員会(決議?)更に、軍備と環境(決議?)地中海、死海連結運河建設イスラエルプロジェクトの環境影響(決議?)及びラテン・アメリカ、カリブ地域における政府間環境会議の決議と勧告(決議?)が採択された。


(2) 第10回管理理事会
 第10回UNEP管理理事会は、我が国を含む58の理事国のうち、54か国が出席したほか、非理事国36、国連機関、国連専門機関、政府間機関、非政府機関及びオブザーバーが参加して、57年5月20日から31日までナイロビで開催された。
 主な議題としては、管理理事会の開催頻度、上記特別委員会の設置、地域事務所のあり方、システムワイド中期環境計画(UNEPが作成する専門機関も含めた国連システム全体の環境に関する中期計画(59〜64年))のプライオリティー設定、オゾン層保護のための基本協定の推進等が審議された。
 この会議の結果は、27の決定としてまとめられている。
 なお、特別委員会の設置については、第11回管理理事会で継続審議されることとなった。
(3) 管理理事会準備会合
 58年5月に開催された第11回管理理事会に先立ち、その準備会合の性格を有する非公式協議が、57年11月29日から12月3日までナイロビで開催された。この会合では、UNEP事務局長より上記特別会合及び第10回管理理事会の報告に関する第37回国連総会の審議状況報告並びに第10回管理理事会決定の遂行状況についての説明があり、主として管理理事会の開催頻度と合理化、地域事務所のあり方、環境の状況の報告、非公式協議の役割等が討議された。
(4) オゾン層保護基本協定
 UNEPは、第9回管理理事会の決定のもとに57年1月ストックホルムにおいて、オゾン層保護基本協定検討法律技術専門家特別作業部会を開催し、さらに6月にはジュネーブで非公式協議、12月には第2回法律技術専門家特別作業部会を開催して、世界的にオゾン層を保護するための方策と協定の準備作業にとりかかっており第11回管理理事会に、その検討結果が報告されることとなっている。
(5) 自然に関する世界憲章の採択
 第37回国連総会は、前文と一般原則、任務及び実施の3章からなる自然に関する世界憲章を採択した。本憲章は、ザイールのモブツ大統領がIUCN(国際自然保護連合)第12回総会で制定を提唱し、54年に第一次草案がIUCNとザイールの専門家により作成され、その後、各国の意見やUNEPの専門家の討議を基に検討が加えられたものである。
(6) ESCAP(国連アジア太平洋経済社会委員会)
 ESCAPは、アジア太平洋地域の経済社会開発のための協力機関として、種々の地域協力プロジェクトやスキームを打ち出しているが、毎年1回開催される閣僚レベルの総会の下に産業・技術・人間居住・環境委員会が置かれている。
 ESCAP第6回産業・技術・人間居住・環境委員会は、我が国を含む22の加盟国と、UNEP等国連諸機関が参加して産業と技術をメインテーマに57年9月7日から13日までバンコクで開催された。
 環境に関する主な議題として、アジア太平洋地域の環境の状況報告書の作成、環境専門家特別作業部会の開催、アジア環境大臣会議の準備、環境調整ユニット以外の部局での環境関係連絡担当官の指名と研修、UNEPアジア太平洋地域事務所とESCAP環境調整ユニットとの統合の可能性等が審議された。
 なお、ここで決定された環境専門家、特別作業部会は、我が国を含む15の加盟国とUNEP等国連機関が参加して57年12月14日から17日までバンコクで開催された。主な議題として、アジア太平洋地域の環境の状況報告書の作成、環境分野におけるESCAP事業計画の検討及び評価、アジア環境大臣会議の開催、環境専門家特別作業部会の役割等が審議された。

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