2 文化財の保護及び歴史的環境の保護
(1) 史跡、名勝、天然記念物の保護
貝づか、古墳、城跡等の遺跡で我が国にとって歴史上又は学術上価値の高いものについては、文部大臣は、これを史跡に指定することができるとされており、57年度現在、1,187件が指定されている。指定された土地においては、現状変更等が制限されることとなっている。また、史跡のうち特に必要がある民有地についても、これを買い上げて保存するとともに、当該遺跡の性格、内容に応じた整備等の保護事業(補助事業)を行っている。57年度は、史跡等の買上げとして赤穂城跡(兵庫県)、太宰府跡(福岡県)等100件、史跡等の環境整備として五稜郭跡(北海道)、一乗谷朝倉氏遺跡(福井県)等166件について補助を行った。
また、古墳等の史跡が集中的に所在している地域について、当該地域の環境整備、資料館の設置等を内容とする「風土記の丘」の建設に補助を行っており、57年度までに10か所の整備を完了している。飛鳥、藤原地域の文化財の保存整備については、史跡の買上げ整備、発掘調査及び資料館の充実等を引き続き実施している。特別史跡高松塚古墳については、壁画修復等を行った。
平城宮跡については、現在約131ヘクタールが特別史跡に指定されており、38年度以来国費による買上げを行うとともに、奈良国立文化財研究所が発掘調査及び整備を行っている。48年度までに約81ヘクタールの土地を買い上げているほか、48年度、49年度及び54年度に奈良県が地方債により、約12.2ヘクタールを先行取得し、これを年次計画により国が取得している。また、51年度から国費による買上げを再開し、57年度までに約1.9ヘクタールの土地を買い上げている。
庭園、峡谷等の名勝地、動植物、地質鉱物等で観賞又は学術上価値の高いものについては、文部大臣は、これを名勝又は天然記念物に指定することができることとされており、57年度末現在、名勝244件、天然記念物916件が指定されている。
文化庁では、近年の開発進展に伴い、天然記念物である動植物が減少しつつあることに対処するため、42年度から年次計画により、全国にわたって天然記念物緊急調査を実施し、この結果を植生図、主要動植物地図としてまとめるとともに、天然記念物の生態等について緊急調査等を実施している。
(2) 古都における歴史的風土の保存
京都、奈良、鎌倉等の古都において歴史的意義を有する建築物、遺跡等が周囲の自然的環境と一体をなして古都における伝統と文化を具現、形成している地域を保存するため、「古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法」に基づき、現在までに京都市等6市1町において約1万3,000ヘクタールの歴史的風土保存区域を指定し、更にこの区域のうち、特に枢要な部分を構成している地域約3,786ヘクタール(35地区)を都市計画に歴史的風土特別保存地区として指定している。
また、「明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境の整備等に関する特別措置法」に基づき、奈良県高市郡明日香村において、都市計画に125.6ヘクタールの第1種歴史的風土保存地区及び2,278.4ヘクタールの第2種歴史的風土保存地区を指定している。
歴史的風土特別保存地区においては、建築物その他の工作物の新築等歴史的風土の保存に影響を及ぼすおそれがある行為を、府県知事の許可に係らしめ、行為の許可を受けられなかった土地所有者からの買取りの申出に基づき、56年度までに約214.0ヘクタールを買い入れ、57年度は約12.1ヘクタールを買い入れた。また、買った土地の歴史的風土の適切な保存を図るため、歴史的風土保存計画に基づいて行う必要な保存施設の整備について53年度より国庫補助を行っており、57年度は国費6,000万円(事業費1億2,000万円)で土砂崩壊防止施設等を整備した。歴史的風土特別保存地区以外の歴史的風土保存区域においても、工作物の新築等の行為を府県知事への届出に係らしめる等の必要な規制を行っている。