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第3節 

5 その他の大気汚染物質対策

(1) 有害物質に対する対策
 大気汚染防止法では、ばい煙発生施設から発生する「有害物質」として、窒素酸化物の他に、?カドミウム及びその化合物、?塩素及び塩化水素、?弗素、弗化水素及び弗化珪素、?鉛及びその化合物を規制している。
 ?〜?の有害物質に係る排出基準は、有害物質の種類ごとに極めて限られたばい煙発生施設に対して設定されているが、これは、有害物質の発生が特定の原料に起因しているためである。このほか、明示的には規制されていない微量の粒子状の物質については、成分の如何によらず「ばいじん」として規制が行われている。
(2) 一酸化炭素対策
 自動車から排出される一酸化炭素については41年に規制が開始されて以来、逐次規制が強化されており、ガソリン・LPG車については48年度規制により、また、ディーゼル車については49年度規制により3物質規制が行われる中で一酸化炭素の低減が図られた。さらに、乗用車、軽量・中量ガソリン車及び軽貨物車については、50年度規制により規制強化が行われ、乗用車から排出される一酸化炭素は、未規制時に比べ90%以上削減されることとなった。
(3) 未規制物質対策
 アスベストは、高濃度の場合にはその吸入によりアスベスト肺などの健康障害を起こすほか、発がん性のあることが知られており、作業環境においては既に労働安全衛生法によって規制されているとともに、近年アスベストによる大気汚染が国際的にも関心を呼んでいる。
 このため、環境庁では、56年度から各種の調査を実施しており、その結果を踏まえて所要の対策を検討することとしている。57年度は、56年度に引き続き各種立地特性別のアスベストの環境濃度を把握するための調査を行ったほか、専門家の指導の下に、アスベスト製品の流通経路に関する調査、ブレ一キの摩耗に関する実験等各種の調査を行った。.
 また、アスベスト以外にも、有害性が懸念される未規制の物質について、順次文献情報の収集整理、測定法、排出実態、環境濃度等の調査を行っている。
 更に57年度には、これまで全国的な実態が把握されていない、大気中の有害性が懸念される物質のうち、緊急性が高いと判断される水銀、ホルムアルデヒド及びベンゾ(a)ピレンの3物質について、その実態把握のための全国調査を実施した。
 これらの調査結果及び有害性に照らし、必要に応じて今後の対策を検討することとしている。
(4) 酸性雨対策
 48年から51年にかけて、北関東を中心にいわゆる酸性雨によると考えられる眼の刺激や皮膚の痛みを訴える事例が発生したが、56年にも群馬県で同種の訴えがあった。
 酸性雨に関する現在までの知見では、大気中に排出された二酸化硫黄、窒素酸化物が大気中でそれぞれ硫酸イオン、硝酸イオンに変換され、これが雨水の酸性化に大きく関与していると言われており、環境庁は、これらの物質の生成機構及び雨水中への取込み機構並びに眼に対する刺激物質の究明等に関する調査結果の解析を56年度にとりまとめた。
 これによると、眼や皮膚の刺激は降水中の酸性物質による作用以外に、共存するホルムアルデヒド(HCHO)、ギ酸(HC00H)、過酸化水素(H202)等の物質の相互作用によると考えられ、酸性雨の発生機構についても定性的にはおおよそ推定されている。
 酸性雨は最近とみに国際的に解決を追られている問題でもあり、我が国においては今のところ北欧や北米で発生しているような酸性雨による生態系の被害は報告されていないが、現にかなり酸性度の高い雨水が観測されていること、また、生態系における被害が明白になった時点では手遅れであることから、今後のエネルギー情勢の推移等にもかんがみ、酸性雨の発生機構の定量的な解明等所要の調査研究を行い、その結果を踏まえて必要な対策を検討することとしている。
 このため、環境庁では57年9月から酸性雨対策検討会において内外の既存知見の収集`整理、諸外国の実情の把握等を行っており、58年度以降、本格的な調査・検討を実施することとしている。

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