2 自動車排出ガス対策
我が国においては、30年代後半以降の急速なモータリゼーションの進展により、特に、大都市及び交通量の多い幹線道路の周辺地域において自動車排出ガスによる大気汚染が深刻な問題となった。
自動車の排出ガスに対する規制は、このような社会的背景の下に40年代初めに導入されたが、43年の大気汚染防止法の制定により、自動車排出ガス規制に関する法体系が整備され、以後規制の拡充強化が逐次強力に進められてきている。
(各物質ごとの規制の経緯については本章第3節158/sb2.2.3>及び参考資料7参照)
この自動車排出ガス規制は、大気汚染防止法に基づき、環境庁長官が自動車(二輪車を除く。)から排出される一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物及び粒子状物質(ディーゼル黒煙)について、許容限度を定めるとともに、運輸大臣がこの許容限度が確保されるよう考慮して道路運送車両法に基づく道路運送車両の保安基準で必要な事項を定めることにより行われている。さらに、この規制を担保するため、自動車排出ガスについても新規検査、継続検査等が行われ、また、街頭における整備不良車両に対する検査等が実施されている。
また、大気汚染防止法に基づき、都道府県知事は、自動車排出ガスによる大気汚染の著しい道路の周辺区域について、その環境濃度の測定を行い、濃度が一定の限度を超えた場合に都道府県公安委員会に対し交通規制の要請を行うとともに、特に必要があると認めるときは、道路管理者や関係行政機関の長に対し、道路構造の改善その他の自動車排出ガスの濃度の減少に資する事項について意見を述べることができることとなっている。
また、関係省庁及び地方公共団体等において、交通流の適正な管理と自動車交通総量の抑制、道路構造の改善等それぞれ次のような対策が進められている。
(1) 交通管理
都道府県公安委員会においては、都市総合交通規制を中心とする交通規制の実施、交通管制センターによる信号機の広域制御及び交通情報の収集・提供による交通の誘導・分散、交通の指導・取締り等によって適切な交通管理を行い、自動車排出ガスによる大気汚染等の抑制に努めている。
都市総合交通規制は、都市の交通の流れを全体としてとらえ、個々の交通規制を有機的に組み合わせることにより、道路機能に応じた交通流の合理的配分と自動車交通総量の抑制を行い、良好な道路交通環境の保全を図ろうとするものであり、56年度末現在、人口3万人以上の646都市で実施しているほか、人口3万人未満の小都市地域についても道路交通の実態に即した交通規制を実施している。
(2) 道路構造の改善等
道路の面からの環境対策として、建設省においては、人家の連担した市街地を避けて郊外にバイパス又は環状道路を整備するとともに、都市の骨格となる各極街路を適切に整備することにより住宅地域における通過交通や重量車等の排除を図っている。また、幹線道路の新設等に当たっては公害を防止し、沿道における良好な生活環境を保全するため、必要に応じ環境施設帯を設置する等の措置を講じている。
一方、自動車交通需要の一部を転換させるため、地下鉄、バス等の大量公共輸送機関の整備に加えて都市モノレール、新交通システムについても事業が進められているほか、流通業務市街地、トラックターミナルの整備等を進めることにより物流の合理化を図っている。