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第2節 

1 環境影響評価の推進

(1) 環境汚染の未然防止を図るための措置として環境影響評価を行うことの必要性は、今日、広く認識されているところであり、その制度的確立についての国民の関心も強いものとなっている。
(2) 我が国においては、昭和47年6月の閣議了解「各種公共事業に係る環境保全対策について」以降、国では「港湾法」、「公有水面埋立法」等の個別法又は行政指導等による環境影響評価を実施する一方、地方公共団体でも、条例や要綱等による環境影響評価を実施してきている。
(3) 法制度化については、56年4月28日、環境影響評価法案が第94回国会(常会)に提出された。同法案は56年11月20日、第95回国会(臨時会)衆議院環境委員会において提案理由説明が行われた。第96回国会(常会)では、同委員会において5月14日、7月9日、8月10日の3日間にわたって審議が行われたが、会期終了に伴い継続審査となり、引き続く審議は第98回国会(常会)にもちこまれた。
(4) 環境影響評価の技術手法の面については、従来から、その開発と精度の向上が図られてきているが、特に40年度からの産業公害総合事前調査その他各種の調査の成果や47年6月の閣議了解等に基づく環境影響評価の実績の積重ね等による知見の集積がある。また、49年6月の中央公害対策審議会防止計画部会環境影響評価小委員会の「環境影響評価の運用上の指針について(中間報告)」、52年7月の「児島・坂出ルート本州四国連絡橋事業の実施に係る環境影響評価基本指針」、「本州四国連絡橋(児島〜坂出ルート)に係る環境影響評価技術指針」等により内容の整備がなされている。
 そして、これらの知見等を踏まえて、53年7月には「建設省所管事業環境影響評価技術指針(案)」が建設省によって作成され、また54年1月には「整備五新幹線に関する環境影響評価指針」が環境庁と連絡調整の上運輸省によって作成され、また54年2月には環境庁において「環境影響評価に係る技術的事項について(案)」が取りまとめられ、更に54年6月には「発電所の立地に関する環境影響調査要綱」が環境庁と協議の上通産省によって作成される等、技術手法についての整備、向上が図られている。
 環境影響評価の技術手法については、事業の実施に伴う環境汚染を未然に防止するという観点から定量的な判断のみならず、不確定性が大きいものについても可能な限り、定性的な判断を行うことが重要であり、その時点において得られている科学的知見に基づき、可能な限り、客観的な調査、予測及び評価を行うということを基本的考え方として、今後ともその整備、向上を図ることとしている。
 なお、関係省庁において、それぞれの所管に係る問題について「環境影響評価マニュアルの整備に関する調査研究」をはじめとして、環境影響評価についての技術手法の向上のための調査研究が推進されている。
(5) 一方、現下のエネルギー事情の変化に対応して、環境庁では石炭利用の拡大に伴う環境影響とその防止対策に関する分析の結果を踏まえ、石炭利用計画に係る環境影響を審査する際の具体的方針等について、検討を進めているところである。
(6) また、環覧庁においては、各種公共事業等のうち、法令等により、事業計画の決定又は認可に際し環境庁に協議等がなされることになっているものについて、環境保全上の観点から所要の意見を述べる等の措置を講じているが、これらについて57年度において関与した主なものは、次のとおりである。
? 港湾計画については、57年度は港湾審議会計画部会が4回開催され、新潟港、横浜港、伊万里港等の港湾計画について審議が行われ、環境保全上の意見を述べた。
? 公有水面埋立計画については、公有水面埋立法の規定に基づく奄美大島笠利町地先(新奄美空港)公有水面埋立ての免許の認可に当たって、主務大臣に対し意見を述べた。
? 電源開発基本計画については、57年度は電源開発調整審議会が4回開催され、三隈火力発電所、玄海原子力発電所、徳山水力発電所等の計画に対して、環境保全上の意見を述べた。
(7) 環境汚染の未然防止を図るためには、以上述べた環境影響評価を推進するほか、国土利用の適正化を図る必要がある。すなわち、これまでのような既存の土地利用の下での汚染物質の排出規制等の対策に加え、今後は地域の自然的特性を踏まえて、環境保全に配慮していく必要がある。
 57年度においても前年度に引き続き土地利用基本計画の見直しが行われ、同計画に即し、公害の防止、自然環境の保全等に配慮しつつ適正かつ合理的な土地利用が推進されるよう、所要の調整を行った。
 このほか都市計画法に基づく市街化区域に関する都市計画についても環境汚染の未然防止の観点から所要の調整を行った。

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