1 ナイロビ会議の意義
57年5月ケニアのナイロビで国連人間環境会議(スットクホルム会議)10周年を記念するUNEP管理理事会特別会合が105カ国の参加の下に開催された。同特別会合では、過去10年間の成果を振り返るとともに、今後10年間の環境の動向と優先的に取り組むべき課題について検討が行われ、環境問題の解決、特に地球環境の保全の重要性に関して意見の一致をみた。
10年前のストックホルム会議では、開発途上国からは、環境問題よりもまず経済発展に取り組むことが重要であるとの意見も出された。その後、開発途上国においても環境問題の広がりと深刻さを経験するに至り、自国の資源の適正な管理と将来の発展にとって環境問題の解決が必要であるとの認識が高まった。すなわち、本特別会合では多くの開発途上国が資源、環境及び開発の間の相互関連の重要性を指摘している。
一方、多くの先進諸国は、地球的規模の環境問題への取組の重要性を強調し、開発途上国に援助を行う際には被援助国の環境に特に留意する必要があることを指摘した。我が国は、地球環境保全のため、?国際機関や条約等による国際協力の促進、?開発途上国に対する援助の際の環境への適切な配慮、?所要の調査研究活動の充実、強化、?省資源・省エネルギーの促進、?環境教育の初等教育段階からの適切な実施について提言し、長期的な環境展望を行うための特別委員会の設置を提案した。
会議で採択されたナイロビ宣言と今後10年間の優先活動分野のリストは、環境保全に対する世界的な取組の指針となるものである。これらにおいては、「人間環境宣言」の意義を確認するとともにストックホルム会議以降に生じた問題への対処方針として、環境、開発、人口、資源の相互関係の重視、国家又は国家の集団の間における合理的なエネルギー計画の策定、環境に対する被害予防の推進等を示している。また、人間としての尊厳ある生活をすべての人に保証できるような状態で地球を将来の世代に伝えることができるように、世界各国の政府と国民がそれぞれの責任を果たしていくことを求めている。