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第3章 環境保全への総合的取組

 環境政策を進めていく際には、現在ますます高まっている環境保全の意義を認識し、環境を管理、保全し、更に進んで、快適な環境を創造していくことが重要である。そのためには、地域的な広がりを伴いながら、さまざまに変化している環境問題に適切に対応し、科学技術の動向や地域の特性を踏まえて、対策を講じていくことが必要である。
 環境保全のための科学技術の開発・導入は総合的な環境政策の基盤となるものであり、また、地域ごとの自然的、経済社会的特性に応じた環境保全施策は、よりきめ細かい環境保全を可能とし、地域環境の保全と創造に貢献するものである。
 このような方向に沿って、環境政策を着実に進め、環境保全の効果を一層高めていくためには、環境問題に係わる当事者である国、地方公共団体、事業者、住民がそれぞれの役割を認識し、その立場に応じた努力を続けていくことが必要である。とりわけ、国の積極的で幅広い努力が求められることになる。
 国はこれまで個別の規制対策を中心に環境保全のための諸施策を進め、環境の悪化を防止し、環境保全の効果をあげてきた。今後とも、まずこれらの施策の着実な推進が必要である。
 同時に、最近における環境問題の複雑化、多様化により的確に対応していくためには、社会資本整備のより一層の推進や土地利用の調整をも含めた多角的、計画的、予防的対策を従来以上に総合的、重層的に進めていくことが重要である。特に、複雑多様な交通公害問題、閉鎖性水域の汚濁等に対する適切な対策を進めるとともにこれまで進められてきた環境影響評価を推進し、環境影響評価制度を確立することが急務である。
 国は環境対策の基本的方向を示し、環境を将来に伝えるという観点から、諸施策を積極的に進め、経済社会の発展のための基盤を形成していかなければならないが、このことに加え、地域ごとに進められる環境改善の努力を支援していくことが必要である。
 地域の特性に応じた環境政策を進めていくためには、国、地方公共団体、事業者、住民など関係者の間の連携が不可欠である。こうした連携に基づく地域の努力は環境保全の効果をより大きなものとするものである。
 本章では以上の観点から、まず国の政策の基本方向を示すとともに、各地域で自らの創意と工夫で進められている地域環境の改善を図り、個性と魅力に富んだ環境をつくり出している例を明らかにすることによって、各地域に期待される役割を検討していく。
 国際社会においても、我が国に対する環境保全のための努力が求められている。今後とも我が国は国際機関等との協力を進めるとともに、経済協力に際して環境の保全に配慮していくことが重要である。本章ではこのような視点から、環境保全に関する我が国の国際協力の方向を探ることとする。

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