3 将来に向けての環境の保全
社会が必要とする諸活動のための環境資源の利用は、今後、引き続き量的に拡大するだけでなく、質的にも多様化し、高度化するものと考えられる。現在と将来の世代に残された環境を、長期的な視野の下で賢明かつ持続的に保全し、適正に利用していくことが、社会の長期的な繁栄のいしずえとなる。
全国各地で起こっているイギリスの「ナショナルトラスト」に範をとった自然保護の分野における市民参加の運動の展開などは、生活や分化の基盤である環境を保全しようとする積極的な運動の一例であり、貴重な水や緑や土を保全しようとするものである。
今後、更に、産業活動が高度化し、技術改新が進展していくことが予測され、都市的な生活様式も全国的に広がっていくと考えられている。このような動きを踏まえて環境のもたらす恵沢を長期にわたって確保するためには、清浄な大気、水質、すぐれた自然景観などを保全していくことが肝要である。
国際自然保護連合(IUCN)が国連環境計画(UNEP)の委託の下に作成した世界保全戦略にも述べられているとおり、保全とは「将来の世代の要求と願いをかなえるための潜在的能力を維持しながら、現在の世代に最大の持続的な恩恵をもたらすように自然資源の利用を管理すること」なのである。
こうした観点に立てば、公害防止投資や、環境を保全し、水や緑を生かす技術の開発に資源を配分したり、地域の持つ特性に応じて自然の仕組みや働きを生かした生産と生活を確立していくことは、環境資源の減耗を防ぎ、環境のもたらすさまざまな恵みを長期にわたり享受できる条件を整備することであり、むしろそれ自身長期的には生産的な活動である。