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第2章 環境問題の視点

 環境問題が発生してきた背景としては、産業の発展と都市の過密化を伴った経済社会活動の拡大、変化が考えられる。これらを進めてきたものが科学技術の進歩であり、また、都市地域への経済社会活動の集積であった。したがって、環境問題を考える際には、この両者との関係でとらえることが適切である。
 まず、産業の発展は、科学技術の改新に支えられて進められてきた。この結果、生産活動は高まり、人々の物的生活水準は大幅に向上してきた。しかしながら、科学技術は、その利用の仕方によっては、環境に影響を及ぼす要因となった面もある。例えば、高度経済成長時代に各種の公害を生じたことや、大規模な開発に当たって、周囲の自然環境への影響に対する配慮をともすれば欠いたことなどである。
 このような反省の上に立って、科学技術の面でも環境保全のための努力が続けられ、公害防止技術や環境汚染予測技術の進歩がみられることになった。環境保全技術の向上は、環境規制の整備とも相まって環境を改善する上での障害を取り除く役割を果たしている。
 今後とも科学技術の導入、適用に際しては、その環境への影響に留意し、長期的な観点から環境の保全を図るとともに、生態系の働きをも正確に評価するという視点に留意することも必要である。
 次に、都市化が全国的に拡大し、それとともに人々の生活がより便利なものとなっている反面、かつて大都市の大規模な交通施設周辺を中心に生じていた交通公害が、次第に地方都市等でもみられるようになってきている。
 このように、環境問題は地域的に広がりつつあるが、同時に地域ごとの産業構造、人口構造、あるいは自然条件などの違いによって異なった様相を示している。環境問題の適切な解決のためには、全国一律の対策とともに地域の特性に応じた対応が必要である。その場合、環境自体のまとまりやつながりに着目し、地方公共団体の枠を超えたより広域的な取組も必要となる。
 健全な経済社会の発展を図っていくためには、環境保全に配慮した科学技術の進歩を促し、地域の特性に配慮し環境保全施策を進めていくことが必要である。その際、有限かつ貴重な環境を将来に伝えていくという視点が重要である。
 以上の観点から、本章では環境保全の意義を明らかにしつつ、環境の保全に密接な関係を持つ科学技術の動向と地域の状況の二つの面から環境問題を検討していく。

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