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第3節 

1 広がりをみせる環境問題

 世界の総人口は昭和55年には44億人と45年の1.2倍に達しており、開発途上国を中心に大幅な人口増加が続いている。また、経済社会活動も農業生産は45年からの10年間で1.3倍、鉱工業生産、エネルギー消費量は45年からの8年間で、それぞれ1.4倍、1.3倍と拡大してきている。この間、化学物質については数万種類の物質が使用され、その数は毎年1,000〜2,000ずつ増加している。
 このような状況の下で、各国における環境問題の中には国境を越え、広域化しているものもみられる。例えば酸性雨や国際河川などにおける水質汚濁の問題である。
 酸性雨については、我が国において、それによると考えられる目の刺激や皮膚の痛みを訴える事例が生じたことがあるが、そのほかに、陸水や土壌を酸性化することにより、水生生物に大きな影響を与えるとともに、カルシウムなどの植物養分を溶脱・流出させ植生に影響を与えられることが知られているものである。
 ヨーロッパにおいては、中部工業地帯から排出された硫黄酸化物などが国境を越えて、北欧諸国まで運ばれ酸性雨となって降下している(第1-3-1図)。また、アメリカにおいても酸性雨は、30年頃には北東部の工業地帯に限られていたが、50年頃には、更に強い酸性雨が西はミシシッピ川、北は東部カナダにまで拡大している。
 国際河川等の水質汚濁の一例として流域から流入する汚染物質による問題がある。アメリカとカナダの国境に位置する五大湖においては残留性の有害物質により汚染とともに富栄養化問題が生じている。また、ヨーロッパ諸国を流れるライン河やフランスとスイス国境に位置するレマン湖においても同様の問題が生じている。

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