近年経済成長率が低下してきている。このことは一方で環境への負荷の増加を抑制するが、他方環境保全への資源配分を困難にする。
このような中で着実に環境の質を向上させていくためには多様化・高度化する国民意識を踏まえつつ、環境問題の変化、広域化に的確に対応していく必要がある。本章ではこのような視点から今後の環境政策の方向について明らかにしていくこととするが、まず、人の生命、健康に影響を与え生活環境を悪化させるような公害の防止の徹底及び自然環境の適正な保全を進め、この上に立って更に環境を全体としてとらえ、その管理、創造を図っていくことが必要である。
こうした環境政策の課題を効率的に達成するためには総合的、計画的、予見的な環境政策の展開が強く求められている。従来の対策が多分に事後的であったのに対し、今後は、環境影響評価制度の確立を始めとする環境汚染、自然破壊の未然防止体制の整備、充実を行い、更に一歩進めて環境の状況をより総合的にとらえ、望ましい環境を保全、創造していくための環境管理の具体化が求められることになる。その際、近年各地で展開されているより良い環境のための快適な環境づくりを支援していくことが国民の期待に沿う方向である。
こうした我々の共有財産である環境をより良く保全し、活用していくという視点は、国際的、地球的規模の環境問題の解決にも生かされなければならない。前章でみたように現在の環境問題は一国の努力だけでは解決できない面も持っている。本章では、国内における環境政策の方向とともに、ストックホルム国連人間環境会議で合意された精神を踏まえつつ、国際社会における我が国の役割を明らかにしていくこととする。