近年、基礎資材型産業の生産、出荷の伸び悩みと加工組立型産業の伸長を内容とした産業構造の変化、エネルギー制約下での省資源・省エネルギーの進展、石炭を中心とする石油代替エネルギーの開発・導入、無秩序に進む都市化など環境をとりまく経済的、社会的条件に大きな変化が生じている。
このような中で環境汚染の発生源は多様化し、発生形態も変化してきている。環境保全の推進のためには、その状況を明らかにしていくことが必要である。本章では、まずかつての環境汚染の深刻化と危機的状況からの脱出という経験を振り返り、その過程での国民の環境に対する意識の多様化、高度化をみるとともに、最近における経済的、社会的条件の変化が環境汚染の状況にどのような影響を及ぼしているかを明らかにすることによって、今後の環境政策の課題を整理、検討していくこととする。
また、今後の環境政策の展開に当たっては、地球的規模の環境問題が大きな課題となってきている。世界的な生産活動の高まり、特に開発途上国の貧困と人口増加の悪循環及びそれから脱出するための経済開発に起因する面が大きい。本章ではそのような状況についても明らかにしていく。