3 騒音・振動その他
(1) 騒音
騒音は、振動、悪臭と並んでいわゆる感覚公害に属しており、日常生活に密着した公害であることから典型7公害に関する苦情の3分の1以上を占めており(第1-1-7図)、一部には深刻な問題を起こしている。
発生源は工場・事業場、深夜営業、建設作業、自動車、航空機等多種多様である。
これを苦情件数でみると、工場・事業場騒音、建設作業騒音が、騒音苦情全体の約半数を占めているが減少傾向にある。最近社会問題化している深夜営業騒音に関する苦情は増加してきており、約2割を占めている(第1-1-8図)。
騒音については、騒音に係る環境基準、航空機騒音に係る環境基準及び新幹線鉄道騒音に係る環境基準が定められているほか、工場・事業場騒音、建設作業騒音及び自動車騒音については「騒音規制法」による規制等が行われている。
自動車交通騒音については、自動車交通量の増大などにより大型の貨物自動車の交通量の多い幹線道路を中心とした道路周辺において問題がなお深刻である。
自動車騒音について、自動車交通騒音の現状について都道府県及び市町村が55年に当該地域の騒音を代表すると思われる地点又は騒音に係る問題を生じやすい地点において行った「自動車交通騒音実態調査」の結果をみると、全国4,009測定地点のうち、環境基準を達成している測定地点の割合は16.6%(666地点)と低く、また、朝方、昼間、夕方、夜間の4つの時間帯のいずれかが「騒音規制法」に基づく要請限度を超える測定地点の割合は23.8%(956地点)であり、前年よりやや増加している。自動車騒音については、自動車構造の改善、走行状態の改善及び交通量の抑制などの発生源対策や道路構造の改善、沿道対策等が実施されている。
次に航空機騒音については、48年12月に環境基準が定められた。これは段階的に目標を達成することとしており、5年改善目標(53年)、10年改善目標が定められており、53年には一部の空港を除き、おおむね5年改善目標の達成をみた(達成率83.3%)。更に、引続き58年12月までに環境基準の10年目標を達成することとされており、そのため自衛隊などが使用する飛行場を含めエンジンの低騒音化等各種の発生源対策、土地利用を含む空港周辺対策等がとられている。
また、新幹線鉄道騒音については、50年7月に新幹線鉄道騒音に係る環境基準が告示され、この環境基準を達成し又は維持するよう努めるものとされたが、既設新幹線の沿線のうち80ホン以上の区域については55年度に一部を除き対策を完了し、56年度からは更に75ホンを超える区域について民家防音工事等の対策が実施されている。
(2) 振動
振動は、工場・事業場、建設作業、交通機関がその主要な発生源である。苦情件数でみると、工場・事業場振動に関するものが最も多く、振動に関する苦情全体の約4割を占めており、建設作業振動がこれに次いでいる(第1-1-9図)。
これら振動については、「振動規制法」により特定工場等及び特定建設作業から発生する振動及び道路交通振動についての規制等が行われている。
更に、近年、人の耳には聞きとりにくい低い周波数の空気振動(低周波空気振動)による影響がクローズアップされてきている。
(3) 悪臭
悪臭は、生活環境を損なう感覚公害であることもあって、地方公共団体が受理する苦情件数では、騒音に次いで多くなっている(第1-1-7図)。
悪臭は、畜産農業、飼料・肥料製造工場、食品製造工場、化学工場等が主要な発生源である。苦情件数を内訳でみると、畜産農業に関するものが最も多く、悪臭に関する苦情全体の約3割を占めている(第1-1-10図)。
これら悪臭については、「悪臭防止法」に基づき、アンモニア等8物質について濃度規制等が行われており、56年11月末現在で、46都道府県、10政令指定都市、1,211市区町村(全市区町村数の約37%)となっている。
(4) 土壌汚染
土壌汚染は、大気、水等を媒介として排煙や排水中に含まれる重金属等の有害物質が土壌に蓄積し、それにより長期間にわたり、農作物等に悪影響を与えるいわゆる蓄積性汚染の典型である。
土壌汚染については「農用地の土壌の汚染防止等に関する法律」(「土壌汚染防止法」)において、カドミウム、銅、砒(ひ)素が特定有害物質に指定されており、汚染地域及び汚染のおそれのある地域について調査等が実施されている。55年度までの調査によると、土壌汚染地域とその推定汚染面積はカドミウム88地域(約5,980ヘクタール)、銅37地域(約1,280ヘクタール)、砒(ひ)素13地域(約400ヘクタール)となっており、重複を除くと全体としての土壌汚染地域は124地域、推定汚染面積は約6,530ヘクタールとなっている。
これらの地域については、「土壌汚染防止法」等に基づく所要の対策が講じられている。
「土壌汚染防止法」に基づく指定地域としては、57年1月末までにカドミウム41地域、銅11地域、砒(ひ)素5地域の計48地域が指定され、このうち41地域、面積にして3,020ヘクタールについて対策計画が策定され、客土、排土、水源転換等が実施されている。
また、県単独事業等により42地域(約330ヘクタール)について対策が講じられているほか、その他の地域についても調査や地域指定の検討が進められている。
(5) 地盤沈下
公害としての地盤沈下は、地下水の過剰な採取を原因として生じるものであり、地盤沈下により多くの地域で建造物、治水施設、港湾施設、農地及び農業用施設等に被害が生じている。しかし、地形、地質、土地利用等の状況の差異によって、地域によって沈下の程度及び被害の状況が大きく異なるという極めて地域的特性の強い公害となっている。
現在までに地盤沈下の認められた主な地域は、全国35都道府県、59地域であり、面積は約8,600平方キロメートル(国土面積の約2%)に至っている。
全国的には、かつての著しい沈下に比べては、落ちつく傾向にあるが、大都市圏地域のうち、東京都区部、大阪市、名古屋市などでは、かつて著しい沈下がみられたが、その後の地下水採取規制の結果、沈下の速度が鈍化、あるいはほとんど停止しており、地方都市のうち青森市、石川県七尾市等についても地下水採取規制やそれに伴う水源転換により以前に比べ沈下速度がかなり鈍化している地域がある。
他方、濃尾平野の一部、筑紫平野の一部のように沈下が続いている地域も多く、埼玉県北東部を中心とする関東平野の一部では、広域的かつ著しい沈下が続いている。また、大きく沈下が進んでいる地域として、北海道石狩平野の一部、宮城県塩釜市、千葉県九十九里平野、兵庫県尼崎市の一部があげられる。
これら地盤沈下の防止のため、「工業用水法」及び「建築物用地下水の採取の規制に関する法律」に基づく地下水採取規制が行われているほか、地方公共団体の条例等による規制、代替水供給事業等の各種の対策が実施されている。
(6) 廃棄物
廃棄物は、し尿や家庭ゴミ等の主として日常生活に伴って生じる一般廃棄物と企業等の事業活動によって生じる燃えがら、汚でい、廃油、廃酸、廃プラスチック類等の産業廃棄物に分類される。
厚生省の調査によると、計画処理区域内における一般廃棄物(ゴミ及びし尿(し尿浄化槽汚泥を含む))の発生量は、54年度で4,500万トン、し尿4,300万キロリットルとなっており、産業廃棄物の発生量は50年度で約2億4000万トンとなっている。また、通商産業省の調べによる製造業(電気・ガス業を含む)からの産業廃棄物の発生量(処理・処分が必要な量)は52年度1億3470万トン、54年度1億678万トンとなっている。
廃棄物については、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に基づき、廃棄物の適正な処理を確保するための措置が講じられているが、毎年の公害事犯検挙件数において廃棄物の不法投棄の件数が依然として3分の2近くを占めている。