2 交通公害対策の総合的推進
(1) 交通公害対策の今後の方向
現在、各交通機関別に、騒音、振動及び大気汚染因子に着目して発生源対策、周辺対策等が鋭意講じられているが、環境基準等を達成するためには、更にその充実・強化を図る必要がある。
今後は、まず当面の対策として、交通公害の激じんな地域について、関係機関の一層の協力の下に、現行の発生源対策、周辺対策等を効果的かつ効率的に実施するとともに、更に、現在講じられている諸対策を拡充・強化することに加え、環境保全の観点から交通体系や都市構造のあり方について検討を行い、交通公害対策の総合的推進を図ることが必要であろう。
その際、交通公害の態様や被害の程度が地域により大きく異なる実情に鑑みて、全国一律的な対策によるだけでなく、地域の自然的、社会的特性による環境条件の差や地域住民の要望に対応するような方策の導入を図る必要があり、この面において、地方公共団体の役割は一層重視されるべきであろう。
? 環境保全と交通体系
戦後、交通部門での最も顕著な現象としては、自動車が我が国のすみずみにまで普及したこと、空港、高速道路、新幹線鉄道も整備が促進され、特に航空輸送が飛躍的に増大したことが挙げられる。また、今後とも交通量の増大が予想される。
これらの状況を踏まえるならば、物流及び人流の両面において、公害のより少ない交通経路や輸送機関に振り替えること、輸送量の増大に伴う交通量の伸びを極力減少させることが必要であり、次のような施策を推進すべきであろう。
ア. 物流の面から、物流の集約化を促し交通量の削減を図ること、物流施設と連係をもった環状道路等を整備することにより通過交通等の都市内流入を減少させることなど。
イ. 人流の面から、公害の少ない交通機関による輸送に振り替えることを基本とし、都市内大量公共輸送機関を整備して自家用乗用車からの転換を促すこと、公害のより少ない交通機関の積極的導入を図ることなど。
? 環境保全と都市構造
我が国の人口集中地区(DID)での人口は35年から50年の15年間に約2、300万人増加しているが、このような人口の都市部への集中が交通公害問題の解決を一層困難にしている。
交通公害の少ない都市構造への転換を図るためには、交通施設と周辺地理利用との整合を図ること基本とし、更に、都市を全体として計画的に整備することなどが必要であり、次のような施策を推進すべきであろう。
ア. 交通施設と住宅、学校、病院など静穏を必要とする施設との間に、緩衝地帯としての役割を果たす土地利用を実現すること。
イ. 交通施設自体が周辺に与える交通公害の影響を極力減少させるため、立地、路線選定、交通施設の構造等に十分配慮すること。その際、交通施設の構造等は、景観等と調和するように努め、周辺環境に適合するよう配慮すること。
ウ. 交通施設周辺の土地利用の適正化に加えて、交通公害の減少にも効果をもたらすという観点から都市構造を見直し、快適な街づくりを図ること。
(2) 中央公害対策審議会に対する諮問
環境庁では、今後の交通公害対策の進め方をより具体的に検討するため、54年4月から10月まで「交通公害対策検討会」を開催し、これまでのところ十分な検討が行われなかったと思われる交通体系と都市構造の問題について主要な政策課題を抽出し、また55年1月及び4月には「交通公害問題に関する懇談会」を開催し、各方面の有識者の意見を聴いた。
これらの検討成果を踏まえて、55年6月26日に、環境庁長官から中央公害対策審議会に対し、「今後の交通公害対策のあり方について」諮問を行った。
諮問に対する中央公害対策審議会の審議は、同審議会交通公害部会において進められており、現在同部会の下に物流専門委員会(環境保全の観点から望ましい物流の実現のための方策を調査する。)及び土地利用専門委員会(環境保全の観点から望ましい交通施設の構造及びその周辺の土地利用の実現のための方策を調査する。)が設置されている。