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第1節 

3 廃棄物の管理

 経済社会活動の拡大に伴う人工の物質・エネルギ―の流れの拡大は、必然的に廃棄物を量的に増加させるとともに質的変化をもたらしている。第2章第3節で見たように廃棄物の発生量は年々増大するとともに、質的にも変化しており、その結果、廃棄物処理費用が増大するとともに、都市域においては埋立地の確保や焼却処理場の立地等がしだいに難しくなっている。このような廃棄物問題の解決のためには、静脈流の源泉となっている生産、流通、消費の段階から最終的な環境への排出段階に至るまでの廃棄物の発生の流れ全体を自然還元、あるいは経済活動への再利用を含めて、いかに制御していくかという視点が必要となっている。
(1) 産業廃棄物
 生産活動等によって発生する燃えがら、汚でい、廃油等の産業廃棄物は全国で年間約2億4、000万トン(50年度)と推計されており、一般廃棄物(ごみ)の約6倍にのぼっている。しかも産業廃棄物の中には原材料などに含まれていた重金属や工業生産の過程で生み出される有害な化学物質などが混入している場合があり、高度な処理技術を要するものが多い。
 しかし、産業廃棄物は、?特定の発生源から多量に排出されること、?その発生源ごとに一定の性状のものが発生することなどから、生産の各過程において適切に収集することによって資源のとしての再利用を図ることができる。廃棄物の再利用は資源の節約のみならず、環境への負荷の軽減につながるとともに、最終処分場を長期にわたって有効に活用することを可能にするものであり、このような廃棄物の再利用の促進を図ることが、廃棄物問題に対する最も基本的な対応となっている。
 資源としての使用価値が乏しく再利用が困難な廃棄物は適正に処理される必要がある。このため廃棄物処理法に基づいて、産業廃棄物の処理は事業者の責任において国が定めた基準に従って適切に処理されることとされており、これを逸脱するような不適正な処理、投棄等は法によって禁じられている。
 このように産業廃棄物については事業者処理が原則となっているが、処理に特別な技術を要するものが多いこともあって、事業者自身による処理のほか、産業廃棄物処理業者に委託されるものも多い。また、中小企業等のために市町村が処理を行い、あるいは都道府県が広域的な処理を行っている場合もある。特に最近においては、事業者自身や処理業者による処理をもってしては解決困難な問題が多いことから、事業者負担の原則を維持しつつ、環境保全の観点から地方公共団体が関与する事例が増えている。
 このように廃棄物処理法を中心に廃棄物については事業者の責任を基本として適切な処理・処分が行われることとされているが、不法投棄等の公害事犯の例も依然多く、廃棄物処理法の違反は55年で約4、500件と全公害事犯の約80%を占めている。このうち不法投棄が73%を占め、不法に処分された産業廃棄物は35万トンにものぼっている。その内訳は建設廃材が約8割を占め、次いで汚でいとなっている。産業廃棄物は量的大きさはもとより、質的にも極めて多様であり、人体に有害な物質も含まれている場合もあり、有効利用の促進による無害化、排出量の抑制、中間処理による無害化減量化とともに、廃棄物の適切な処分が行われるよう厳しい監視及び適切な指導が求められている。
(2) 一般廃棄物
 第2章第3節でみたように、所得の上昇の中でごみの発生量は漸増しており、このため最終処分場の確保が難しくなるとともに、ごみ処理のための経費も急増している。また、し尿についても水洗化が進められ、衛生的な処理が進められつつあるが、一方で下水汚でい(産業廃棄物として取扱われる。)の処理問題が大きくなってきている。
 第1次石油危機以降ごみの発生量はそれまでの急増傾向からその伸びを鈍化させているが、今後とも所得の上昇にともなってその発生量はなお増加するものとみられる。その一方で大都市域を中心に最終処分場の確保が困難になるとともに遠隔化しており、収集、運搬等の経費の増加も著しい。このような中で、環境問題や資源問題の発生を契機に国民の間に資源の節約意識が浸透しつつあり、廃棄物の有効利用も進められている。また、廃棄物処理施設の整備により廃棄物の減量化努力が行われている。しかし、今後さらに増大が予測されるごみに対しては生産者、流通業者、消費者など三者の協力を通じて過大な包装の自粛など動脈流における物質・エネルギ―の拡大を防止するとともに、家庭等における廃棄物の排出を抑制するための資源の節約のより一層の促進が必要である。さらに廃棄物の有効利用や減量化を図るための処理技術の開発にも努める必要がある。
 一方、し尿については、下水道やし尿浄化槽の設備を通じて水洗化が進められており、衛生的な処理が行われるようになってきている。しかしその一方で、下水道において大量に発生する汚でい(産業廃棄物として取扱われる。)の処分のあり方が問題となっている。一部では汚でいを安全性に留意しつつコンポスト化等を行うことによりその有効利用を図ることが行われているが、今後ともこのような自然還元について積極的に検討する必要があるといえよう。

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