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第4節 

3 廃棄物の再利用

 現代の社会経済は、生産、流通、消費を通じて巨大な物質・エネルギ―の流れをつくり出し、その中で、大量の廃棄物が生み出され、環境中に排出されている。このような環境に対し高負荷型のシステムをリサイクルを通じ、より負荷の小さいシステムに変える方向が廃棄物の再利用である。
 公害、廃棄物問題の深刻化や石油危機を契機とする資源・エネルギー問題の発生によって、廃棄物の資源としての価値を見直し、再利用を図る動きが活発化している。
 産業廃棄物については、特定の発生源から一定の性状のものが多量に発生することや、廃棄物の再利用を図ることが処理・処分コスト、生産コストの引下げにつながる場合も多いことから、廃棄物の再資源化が進んでおり、54年現在において再資源化率は、54.5%となっている。例えば、鉄鋼業等において発生する鉱さいはバラスや肥料などに利用されている。
 また、都市ごみ等の一般廃棄物についてもその再利用の試みが行われている。
 一般に廃棄物利用はその利用目的によって、?エネルギ―の回収を目的とするもの、?物質の回収を目的とするもの、及び?土壌還元を目的とするものに分類できる。
 都市ごみの中には、プラスチック、紙、ちゆう芥など可燃物が多く含まれているが、一方で水分が50%、無機物が10%程度含まれているため発熱量は1kg当たり1、500〜2、000kcalと小さく、また、季節的な変動も激しいため燃料としてはこれまであまり利用されなかった。しかし、石油供給の不安定化、高価格化の中で、エネルギ―としての価値の見直しが行われ、廃棄物の燃焼に伴う熱を発電あるいは給湯に用いる事例が地方公共団体を中心に増えている。
 また、ごみとして排出される前に有価物を回収し、資源として再利用が行われている。古紙の回収はその代表的な例である。我が国は紙の原料であるパルプ材の約45%を輸入にたよっており、紙の原料確保が問題にもなっているが、このような意味からも古紙の再生利用は重要である。現在、我が国の古紙回収率は40%程度であり、アメリカの20%に比べかなり高くなっている。しかし、古紙回収は技術的には60%程度まで可能とされており、古紙価格の安定や国民の協力により、古紙回収率の向上に努める必要がある。
 廃棄物の土壌還元の例としてはコンポスト化がある。産業以前の社会においては、ごみやし尿の大部分は農家の肥料として利用され土壌への還元が行われていたが、産業化の進展に伴って、化学肥料が普及するとともに、一方で廃棄物にはプラスチック、化学物質、重金属等有機物以外の異物の混入が増加しているため、都市と農村との有機物の循環がたたれ、堆肥としての利用は急減していった。53年現在で、ごみの堆肥飼料化されている割合は全体の0.2%にすぎない。しかし、廃棄物の埋め立て用地の確保難、焼却処理場の立地難等によって、ごみや汚でいのコンポスト化があらためて見直されており、厚生省、農林水産省、建設省などにおいて研究が進められているが、今後安全なコンポストの生産を積極的に進め、その有効利用を検討していく必要がある。
 ごみの再利用はここにあげた3つの例の他にも多くのものが現在実施されている。廃タイヤのエネルギ―源としての活用、使い古された冷蔵庫やテレビなど粗大ごみからの金属の回収、びんの回収等である。しかし、現在の市場システムにおいては、製品の生産→流通→消費のプロセスは整備されているが、消費→流通→生産に至るいわば静脈部分に当たるプロセスは未整備な状況に置かれているものも多く、これには、経済性からみた再資源化の困難性がある。現在、空かんの廃棄が大きな問題になっているが、このような散乱性の廃棄物の対策として有効利用の推進が必要である。

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