国土を被覆している植生をはじめ、海域、海岸、河川、湖沼等の自然環境はそこに生息する野生動物とともにその変貌は、最近著しいものがある。このように変貌していく自然環境を適切に保全するためにまず第一になすべきことは自然環境の現状を的確には握し、その変化の方向を見すえることである。
このため、昭和48年度には、「自然環境保全法」第5条に基づき第1回自然環境保全基礎調査を実施した。自然環境保全基礎調査は、我が国の自然環境の状況を、総合的、科学的には握するため、おおむね5年ごとに実施されるもので、一般に「緑の国勢調査」と呼ばれている。第1回調査に次いで、周到な計画のもとに53年度から第2回調査が開始された。まず、51年度より学識経験者で構成される検討会において調査項目、調査方法等が検討され、52年度末に調査要綱が策定された。その骨子は第8-1-1図のとおりである。このうち、53年度には、4億228万円の予算で、特定植物群落、植物分布(哺乳類、鳥類、両生類、は虫類、淡水魚類、昆虫類)、海岸、干潟・藻場・サンゴ礁分布、海域環境、海域生物の6項目の調査を実施し、54年7月に動物分布(鳥類)、海岸調査を除く前記各調査の都道府県別調査報告書を公表した。なお、動物分布調査の集計速報を54年6月及び55年1月に公表した。
また、54年度には、4億352万円の予算で次の4項目の調査及び53年度調査のうち動物分布(哺乳類、鳥類)、海岸調査結果の集計整理を実施した。
調査結果の全国的な集計整理及び考察は、55年度に、動植物分布図及び現存植生図等地図類の作成は、55、56年度にそれぞれ予定している。
(1) 植生調査
国土の植生の現況を詳細には握するとともに、地域レベルの諸計画に対応できる現存植生図を全国的かつ統一的に整備する一環として、国土の約2分の1の地域を対象に植生調査を実施し、5万分の1現存植生図を作成した。
(2) 表土改変状況調査
関東地方1都6県(島嶼部は除く。)における20年頃、35年頃、50年頃の3時期の表土の状況について空中写真の判読等の方法では握し、表土改変の実態を時系列的及び量的に調査した。
(3) 湖沼調査
全国に存する約500ヵ所の天然湖沼を対象として、湖沼の地形、地理、生物の概要、透明度等の水質、湖岸の改変状況を調査した。また、琵琶湖等の代表的な61湖沼については、魚類相の調査も実施した。
(4) 河川調査
109の1級河川の幹川及び沖縄県浦内川を対象として、魚類の生息及び河岸の改変状況について調査した。また、全河川を対象として集水域が原生状態を保持している河川(原生流域)の摘出を実施した。