前のページ 次のページ

第5節 

2 瀬戸内海の環境保全対策

 瀬戸内海の環境保全対策については、「瀬戸内海環境保全特別措置法」が関係政令等とあわせて54年6月から施行され、同法に基づく各種の施策のほか、下水道及び廃棄物処理の整備等の施策を講じており、その概要は次のとおりである。
(1) 府県計画の策定
 「瀬戸内海環境保全特別措置法」の施行に伴い、瀬戸内海関係13府県知事は、53年4月に閣議了解された瀬戸内海環境保全基本計画に基づき、当該府県の区域において瀬戸内海の環境の保全に関し実施すべき施策について府県計画を定めるものとされ、関係府県において計画策定のための作業が進められた。
(2) 特定施設の設置等の許可
 瀬戸内海関係13府県においては、「瀬戸内海環境保全特別措置法」第5条及び第8条の規定に基づき特定施設の設置等について許可制が採られており、53年度は設置の許可452件、変更の許可333件が行われた。
(3) 水質総量規制制度の実施
 最近における公共用水域の水質の状況が、総体的には改善の方向にあるものの、多数の汚濁発生源が集中する広域的な閉鎖性水域においては、生活環境項目に係る環境基準の達成がなお困難であることから、53年6月の水質汚濁防止法の改正により、政令で定める水域について政令で定める項目に係る総量規制が実施されることとなったが、瀬戸内海については、既に量規制の規定がもりこまれていたこと等の理由により、政令の指定をまつことなく、「瀬戸内海環境保全特別措置法」の中で化学的酸素要求量に係る総量規則の実施が規定された。54年6月には、内閣総理大臣が総量削減基本方針を定め、削減目標等を示し、これを受けて関係府県において総量削減計画策定の作業が進められた。
(4) 燐等指定物質の削減指導方針の策定
 富栄養化対策としては「瀬戸内海環境保全特別措置法」に基づき指定物質の削減指導を図ることとされているが、政令により燐及びその化合物が指定物質とされ、54年7月関係府県知事に対し、指定物質削減指導方針の策定に関する環境庁長官の指示を行った。この指示により、関係府県知事は、59年度を目標年度として、各府県の水質の現況等に応じ燐及びその化合物の排出量を
? 現状より減少させること(大阪府及び兵庫県)
? 現状より増加させないこと(岡山県、広島県、山口県、香川県、愛媛県、福岡県、京都府及び奈良県)
? 現状よりの増加を極力防止すること(和歌山県、徳島県及び大分県)を目標として、富栄養化による被害が多発発生している水域に十分配慮して指導方針を策定することとされ、関係府県において策定作業が進められた。
(5) 自然海浜保全地区制度の実施
 瀬戸内海においては、人口、産業の集中に伴う各種の開発等によって、自然海浜の減少が著しいことから、残された自然海浜を海水浴等のレクリエーションの場等として保全することは、緊要の課題となっている。このため、「瀬戸内海環境保全特別措置法」によって関係府県は条例により、瀬戸内海の海浜地及びこれに面する海面のうち、
? 水際線付近において砂浜、岩礁その他これらに類する自然の状態が維持されているもの
? 海水浴、潮干狩りその他これらに類する用に公衆に利用されており、将来にわたってその利用が行われることが適当であると認められるもの
 について、自然海浜保全地区として指定できる旨規定された。自然海浜保全地区では、工作物の新築等に関して届出制が採用され、自然海浜の保全と快適な利用の確保が図られる。
 これを受けて関係府県において指定候補地の現況を実施するとともに、条例制定の作業が進められた。
(6) 埋立てに当たっての環境保全上の配慮
 「瀬戸内海環境保全臨時措置法」第13条の規定に基づき、49年6月に埋立てによる瀬戸内海の環境の一層の悪化を防止するため、瀬戸内海での埋立ての免許又は承認をするに当たり関係府県知事の配慮すべき基本方針が定められた。同法執行後53年11月までの間に1,131件、総面積3,208ヘクタールの埋立てが免許又は承認されている。これは同法執行前の46年1月1日から48年11月1日の間の実績と比べると年平均の件数で63%、面積で29%となり、埋立ては大幅に減少している。
(7) 下水道整備の促進
 53年度は、第4次下水道整備5か年計画に基づき瀬戸内海関係13府県における公共下水道、流域下水道及び特定公共下水道について総事業費約3,853億円(全国総事業費の約26%)が投資され、下水道の重点的な整備が図られた。
(8) 廃油処理施設の整備
 船舶廃油等を処理する廃油処理施設は、54年10月1日現在、瀬戸内海の24港40か所において整備されている。
(9) 水質汚濁の調査、監視取締り等
 瀬戸内海の汚濁の機構が複雑であるため、47年から継続的に水質調査を実施しているほか、赤潮発生予察の技術の開発、赤潮発生機構の解明、貧酸素対策等に関し調査を行った。
 警察庁においては、瀬戸内海の浄化を図るため。「瀬戸内海に流入する河川等における水質汚濁事犯の計画的取締り」(瀬戸内ブルーシー作戦)を推進しており関係11府県警察が緊密な連携の下に排水基準違反等の水質汚濁事犯の取締りを積極的に実施した。
 また、海上保安庁は、瀬戸内海が海岸汚染の多発する海域であるため監視重点海域として、巡視船舶及び航空機を配備して、緊密な連係体制をとっている。
 このほか、水質の監視測定施設の整備等が行われた。
(10) 環境保全に関する思想の普及と意識の高揚
 瀬戸内海の環境保全を推進するに際して、地域住民、事業者等による理解と協力が不可欠であることから、従来よりの環境保全に関する思想の普及活動事業を実施してきたが、54年度も、関係府県において、研究会、公演会等を実施した。

前のページ 次のページ