1 産業公害防止手段の多様化
大気汚染、水質汚濁については発生源に対し汚染物質の排出等を規制する排出規制が行われており、特に硫黄酸化物、CODについては個別濃度規制から総量規制が導入された。大気汚染、水質汚濁以外にも騒音、振動など各種の公害発生源に対し順次発生源に対する排出規制が設けられてきていると同時に、発生源によっては排出規制が有効に働かない場合には、土地利用規制などの面からの公害防止も進んできている。
産業公害の防止には基本的には2つの方法があり、その1つは、排出規制などの直接的な規制により、汚染物質を削減あるいは一掃する方法であり、公害による被害が著しいか、または広域的に排出される汚染物質に対してとられている。この直接的な規制の方法のみでは、発生源が一地域に高度に集中したりあるいは事業者の対応力、技術的理由により基準の達成が困難な場合には、排出規制に加えて土地利用規制などを補完的あるいは代替的に用いて居住空間と発生源を隔離あるいはその間に緩衝物を設置することがその2である。
この2つの方法に加えて、我が国においては水俣病、イタイイタイ病、四日市・川崎ぜんそくなどに示されるように公害による健康被害が重とくであったため、公害による健康被害者の迅速な救済や堆積汚泥の除去、汚染農地の排土と客土など環境復元のための措置が、いわば3つ目の方法としてとられている。このように産業公害に対する環境保全のための手段は次第に多様化し、合理的な環境保全施策の展開が可能になってきている。