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第11節 国際協力の推進

(1) 多国間及び二国間協力の推進
ア 国連における活動
 国連環境計画(UNEP)は、事務局設置後7年目を迎えてその活動も軌道に乗り、国際的な協力を得て数多くのプログラムを積極的に推進している。我が国は環境の分野での数多くの経験と豊富な知見を有しており、このUNEPの活動においては、理事国の一員となるなど、国際社会の一員として積極的に貢献してきた。
 今後とも、「国際環境情報源照会制度」(INFOTERRA)、「ストックホルム会議後10年の環境の現況」等のプロジェクトの推進に積極的に寄与するとともに、環境保護法制の充実のための行動計画等への参加を図るなど、ESCAP地域で行われるプロジェクトの実施を通じて、これら地域との協力関係も一層深めていくこととしている。
イ 条約等
 海洋投棄規制条約(「廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約」)、ワシントン条約(「野生動植物で絶滅のおそれのあるものの国際取引に関する条約」)等の環境保護に関連する条約については、批准すべく、引き続き国内体制の検討を行うなど準備を進めることとしている。
ウ OECDにおける活動
 OECDにおいては、昭和54年5月に第2回の閣僚レベル環境委員会を開催する。
 49年に開催された第1回の閣僚レベル環境委員会では、1980年代に向けての環境政策に関する基本的な考え方が表明され、また、化学物質に関するアセスメント、重要な公共及び民間事業の環境への影響の分析、汚染者負担の原則の実施等に係る10の具体的な行動計画が勧告として取りまとめられるなど、今日の環境政策の重要な方向を指し示した。第2回の会合は、今後の環境政策を、変化しつつある経済社会の状況に応じた新しい側面から検討し、「予見的な」環境政策のあり方を展望するものであり、その討議結果は、宣言、勧告の形に取りまとめられる。本会合は、前回会合と同様、我が国をはじめとする先進工業諸国の環境行政に強い影響をあたえるものであり、我が国としては、これに積極的に参加することはもちろん、その成果に沿って、環境行政の一層の充実に努めていくこととしている。
 このほか、環境委員会の幅広い活動の中で、特に我が国の重要な役割が期待されているプロジェクトとしては、次のようなものが挙げられる。
 「窒素酸化物、炭化水素及びその関連物質」プロジェクトでは、我が国がリード・カントリーとして中心となり、各国の状況を取りまとめ、窒素酸化物及び光化学オキシダント対策のための方策を検討する。また、1979年度の重点活動分野である「化学品テストプログラム」についても、我が国は「分解性・蓄積性」専門家グループのリード・カントリーとしてその取りまとめの任に当たるほか、他の5つの専門家グループ及び第二部予算による特別プログラムにも、我が国自身の知見を報告する等、積極的にその活動に協力することとしている。
 近年国民の関心を集めている生活環境の質的側面、環境の快適さについては、OECDの場でも、都市環境問題を中心とした都市問題を積極的に検討することとなったので、これに参画することとしている。
エ 二国間協力
 日米環境保護協力協定に基づく協力に関しては、第4回合同規格調整委員会を54年秋頃日本で開催する予定であるほか、光化学大気汚染、有害物質の識別と規制、環境と経済等の13の専門家会合について、情報交換及び共同研究を引き続き推進する。
 また、日独科学技術協力協定に基づく環境保護技術パネルに関しては、環境由来の有害物質の健康影響等の4つのテーマに取り組むこととしている。
(2) 海外広報の推進
 我が国は、環境汚染、その対策に関する多くの知見を有しており、諸外国の環境政策の充実のためにこれらを的確な情報として提供することは、人類社会の一員としての、また、国際社会に大きな位置を占める先進国としての責務に照らして、ますます重要となってきている。このため、海外広報活動の一層の充実を図ることとし、英文環境白書等定期刊行物のほか、英文法令の追加、改訂並びに国際的に要望の高い行政資料を英文資料として作成することなどを推進することとしている。
(3) 技術協力等
 東南アジアをはじめとする発展途上国における公害防止担当行政官及び技術者の養成を援助するための環境行政、環境技術、水質汚濁・下水道、及び廃棄物処理の各研修コースは、54年度には、それぞれ第7回、第5回、第7回、第11回を迎えるが、発展途上国の公害防止対策の向上と相互理解の増進を図るべく、その内容の一層の充実に努めることとしている。
 また、国際協力事業団を通じての調査及び技術協力計画については、専門家を派遣するなど可能な限り積極的に協力を行っていくこととしている。
(4) 諸外国の環境事情の調査
 我が国の環境行政の充実を図り、また、諸外国の環境政策の向上に適的確に寄与していくためには、その基礎として、諸外国の環境問題、行政制度等をは握しておく必要がある。この観点から、54年度においては、特に、近時国民の関心事となっている快適な環境問題に関し、この面で歴史を有する欧州諸国の実情を文献資料等に基づき調査することとしている。

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