国立公害研究所は、昭和49年3月の発足以来、我が国の環境科学研究の中心的役割を果たすべき機関として、鋭意その整備に努めてきており、研究活動において主要な機能を発揮する大型実験施設のうち、主要なものが順次整備され、組織定員の充実とあいまって、研究活動は一段と本格化する時期を迎えている。
(1) 機構・定員
54年度においては、大型実験施設の完成及びこれに伴う研究活動の活発化に伴い、機構・定員の充実を図ることとしている。
組織については、水質土壌環境部に赤潮の発生機構に関する研究の中核となる海洋環境研究室を新設するほか、技術部生物施設管理室、同部理工施設管理室、環境情報部業務室及び総務部総務課にそれぞれ新たに係りを設けるなど内部機構の充実を図ることとしている。
定員については、大気拡散風洞、エアロドーム、特殊計測実験施設等の施設関連研究及び新規特別研究等の推進強化を中心に21名の増員を図ることとしている。なお、これにより54年度末の機構・定員は10部2課30室223名となる。
(2) 施設整備
施設の整備は、順調に進んでおり、その中心となる大型実験施設について見ると、53年度までに植物実験用環境調節用施設(植物トロン)、動物実験用環境調査施設(動物トロン)、水環境実験施設(アクアトロン)、大気化学実験棟(光化学スモッグチャンバー)、大気物理実験棟(大気拡散風洞)、土壌環境実験施設(土壌トロン)が完成したのに続いて、54年度においては、大気汚染質実験棟(エアロドーム)、動物トロン(?期)等が完成するほか、新たに植物トロン(?期)、騒音影響実験棟、臨湖実験施設などの建設又は調査に着手することとしている。
(3) 研究方針
54年度の研究活動としては、特別研究は8課題(うち新規3)とし、光化学スモッグチャンバー関連で「スモッグチャンバーによる炭化水素―窒素酸化物系化学反応の研究」(51年度から継続)、動物トロン関連で「大気中汚染物質の単一及び複合汚染の生体に対する影響に関する研究」(52年度から継続)、アクアトロン関連で「陸水域の富栄養化に関する総合研究」(52年度から継続)、土壌トロン関連で「有機廃棄物、合成有機化合物、重金属等の土壌生態系に及ぼす影響と浄化に関する研究」(53年度から継続)、大気拡散風洞関連で「臨海地域の気象特性と大気拡散現象の研究」(53年度から継続)の5課題を52年度に引き続き実施するほか、新たに「複合大気汚染環境の植物影響に関する研究」(植物トロン関連)、「環境中の有害物質による人の慢性影響に関する基礎的研究」及び「海域における富栄養化と赤潮の発生機構に関する研究」の3課題を実施することとしている。
更に、経常研究としては、環境汚染が人の健康及び動植物に及ぼす影響、環境汚染の機構の解明、環境汚染の測定分析方法、環境に関する知見を活用した総合解析等の各分野における研究活動を一段と拡充強化することとしている。
なお、53年度における特殊計測実験棟の完成に伴い、放射性同位元素を利用して研究の充実促進を図ることとしている。
このほか、環境情報システムの整備については、数値データ蓄積検索システムに係る各種環境指標のうち、大気汚染及び水質汚濁に関するデータ整備の拡充を図ることとしている。
また、国連環境規格(UNEP)の国際環境情報源照会制度(INFOTERRA)についても、情報源登録を拡大するなど所要の作業を進めることとしている。
地方公共団体の試験研究機関としての地方公害研究所とは、「共同研究員」制度を有効に活用するなど相互に連携を蜜にして、問題の解決を図っていくこととしている。