2 瀬戸内海の汚濁防止対策
瀬戸内海の水質汚濁防止対策については、「瀬戸内海環境保全臨時措置法」に基づく各種の施策のほか、下水道、廃油処理施設の整備等の施策を講じており、その概要は次のとおりである。
(1) 基本計画の策定
「瀬戸内海環境保全臨時措置法」に基づき、政府が策定することとされていた瀬戸内海の環境保全に関する基本となるべき計画については、瀬戸内海の環境保全の目標及び目標達成のための基本的な施策等を定める瀬戸内海環境保全基本計画を53年4月に閣議決定により策定した。
(2) 産業排水に係るCODの半減措置
臨時措置法第4条の規定により、産業排水に係るCOD汚濁負荷量を51年11月までに47年当時の1,345トン/日から2分の1の673トン/日を目途として削減するための上乗せ排水基準の設定が行われてきたが、51年11月には負荷量は459.5トン/日となり131.7%の達成率となった。
(3) 特定施設の設置等に関する許可制の運用
瀬戸内海11府県においては、臨時措置法第5条及び第8条の規定に基づき、特定施設の設置等について許可制が採られており、同法施行後53年11月現在、設置の許可1,544件、変更の許可2,320件が行われている。
(4) 埋立てに当たっての環境保全上の配慮
臨時措置法第13条の規定に基づき、49年6月に、埋立てによる瀬戸内海の環境の一層の悪化を防止するため、瀬戸内海での埋立ての免許又は承認をするに当たり関係府県知事の配慮すべき基本方針が定められている。その概要は下記のとおりである。
ア 海域環境保全、自然環境保全及び水産資源保全上の配慮事項
イ 極力埋立てを避けるべき海域の指定
ウ 留意事項に適合しない埋立てをできるだけ避けるよう配慮すべき海域の指定
同法施行後53年11月までの間に1,131件、総面積3,208ヘクタールの埋立てが免許又は承認されている。これは同法施行前の46年1月1日から48年11月1日の間の実績と比べると年平均の件数で63%、面積で29%となり、埋立ては大幅に減少している。
(5) 公害防止計画の推進
公害対策を総合的に推進するための公害防止計画については、水島、大阪、大分等の18地域について計画が承認され、これに基づく対策が実施されている。
(6) 下水道整備の促進
52年度は、第4次下水道整備5か年計画に基づき瀬戸内海関係11府県における公共下水道、流域下水道及び特定公共下水道について総事業費約3,378億円(全国総事業費の約26%)が投資され、下水道の重点的な整備が図られた。
(7) 廃油処理施設の整備
船舶廃油等を処理する廃油処理施設は、54年3月末現在、瀬戸内海の24港40か所において整備されている。
(8) 水質汚濁の調査、監視取締り等
瀬戸内海の汚濁の機構が複雑であるため、47年から継続的に水質調査を実施しているほか、赤潮発生予察の技術の開発、貧酸素対策、リンの負荷量等に関し調査を行った。
警察庁においては、瀬戸内海の浄化を図るため「瀬戸内海に流入する河川等における水質汚濁事犯の計画的取締り」(瀬戸内ブルーシー作戦)を推進しており、関係11府県警察が緊密な連携の下に排水基準違反等の水質汚濁事犯の取締りを積極的に実施した。
また、海上保安庁は、瀬戸内海が海洋汚染の多発する海域であるため監視重点海域として、巡視船艇及び航空機を配備して、緊密な連携監視体制をとっている。
このほか、水質の監視測定施設の整備等が行われた。
(9) 瀬戸内海環境保全臨時措置法の改正
53年6月に成立した「瀬戸内海環境保全臨時措置法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律」により瀬戸内海環境保全臨時措置法が大幅に改正され、名称が「瀬戸内海環境保全特別措置法」に改められ、恒久法化されるとともに、新たな措置として府県計画の策定、水質総量規制の実施、富栄養化防止のための燐その他の物質の削減対策、地区指定による自然海浜の保全制度等が設けられた。この改正法の施行は公布の日(53年6月13日)から1年以内とされている。