3 油濁損害補償対策
タンカーによる油濁事故が起きた場合の補償制度として、国際的には、1969年の「油による汚染損害について民事責任に関する国際条約」(1975年6月発効、以下「民事責任条約」という。)及びこれを補足する1971年の「油による汚染損害の補償のための国際基金の設立に関する国際条約」(1978年10月発効、以下「国際基金条約」という。)が採択されている。我が国は、これら2条約を国内法化した「油濁損害賠償保障法」を50年12月に制定し、51年6月3日に民事責任条約を、同年7月7日に国際基金条約をそれぞれ批准した。この油濁損害賠償保障法は
? タンカー船主に無過失責任を課すること
? 油濁損害についてのタンカー船主の責任限度額を「船舶の所有者等の責任の制限に関する法律」による一般の損害についての船主の責任限度額の2倍に引き上げること
? 2千トンを超える油を輸送するタンカーに責任保険契約の締結を強制すること
? 油濁損害の被害者は、国際基金条約で定めるところにより、船舶所有者から十分な賠償を受けられなかった額について、国際基金に対し、補償の請求することができること
等を定めており、従来の制度に比し、被害者保護の面で大きく前進したものとなっている。
また、油濁による漁業被害のうち、相当部分を占める原因者不明の油濁被害については、財団法人漁場油濁被害救済基金が実施する被害漁業者に対する救済金の支給、防除費の支弁等の救済事業に対して、引き続き助成を行った。なお、52年度における基金の救済実績は、総件数69件、総救済額160百万円である。