4 その他の大気汚染物質対策
(1) ばいじん・粉じん対策
大気中の粒子状物質は「降下ばいじん」と「浮遊粉じん」に大別され、更に、浮遊粉じんは環境基準の設定されている粒径10μ以下の浮遊粒子状物質とそれ以外の浮遊粉じんに区分される。これらの粒子状物質の発生源は、工場・事業場等産業活動に係るものだけでなく、風による土壌粒子の舞い上がりや黄砂等の自然現象も含まれ、多種多様である。これらの各種発生源のうち、大気汚染防止法では、工場及び事業場における事業活動に伴って発生するもののうち、?燃料その他の物の燃焼又は熱源としての電気の使用に伴い発生する物質を「ばいじん」とし、?物の破砕、選別その他の機械的処理又は堆積に伴い発生し、又は飛散する物質を「粉じん」として規制している。
なお、自動車から排出されるディーゼル黒煙については、新車に対し47年から、使用過程車に対し50年から、それぞれ規制が実施されている。
ばいじんについては、施設の種類及び規模ごとに排出基準が定められており、更に施設が密集し、汚染の著しい地域においては、新・増設の施設に対し、更に施設が密集し、汚染の著しい地域においては、新・増設の施設に対し、より厳しい特別排出基準が定められている。これらの排出基準は、46年の規制強化によって設定されたものである。
粉じんの規制については、46年に構造、使用および管理に関する基準が定められている。
ばいじん及び粉じんの排出基準等は46年以来強化されていないが、環境庁においては、52年度から3か年計画で、専門家からなる検討会を設置して、集じん技術の現状、集じん装置の費用、ばいじん排出の実態及びこれら基礎資料に基づく効果的かつ合理的なばいじん等対策について検討を行っている。
今後は、この検討結果を踏まえつつ、浮遊粒子状物質に係る環境基準の達成状況が低いことをかんがみ、その達成に向け、排出規制の強化等所要の対策について検討を行うこととしている。
(2) 有害物質に対する対策
大気汚染防止法では、ばい煙発生施設から発生する「有害物質」として、窒素酸化物の他に?カドミウム及びその化合物、?塩素及び塩化水素、?弗化水素及び弗化珪素並びに?鉛及びその化合物を規制している。
?〜?の有害物質に係る排出基準は、有害物質の種類ごとに極めて限られたばい煙発生施設に対して設定されているが、これは、有害物質の発生が特定の原料に起因しているためである。このほか、明示的には規制されていない微量の粒子状の物質については、成分の如何によらず「ばいじん」として規制が行われている。
このうち、廃棄物焼却炉から排出される塩化水素については、52年6月に排出基準が設定されていたところであるが、既設の施設(51年度現在約7,500施設)にあっては、54年12月1日から基準が適用されることになっている。
(3) 一酸化炭素対策
自動車から排出される一酸化炭素については、41年に規制が開始されて以来、逐次規制が強化されたが、ガソリン又はLPGを燃料とする自動車については、48年度規制により、また、ディーゼル車については、49年度規制により、本格的な3物質規制が行われる中で、一酸化炭素の低減が図られた。更に、50年度には、乗用車及び軽中量ガソリン車について規制が強化され、乗用車から排出される一酸化炭素は未規制時に比べ90%以上削減されることとなった。
(4) 未規制物質に係る排出抑制対策
ア 塩化ビニルモノマー
塩化ビニルモノマーについては、49年度及び50年度に大気中への排出濃度に関する測定法の研究を、51年に塩化ビニルモノマー及びポリマー製造工場等の排出口等における実測調査を実施し、更に52年度には、排出量の大きい乾燥器からの排出をは握するため、乾燥器に入る前のレジン等に残留する塩化ビニルモノマーを簡便正確に測定する方法の検討を行った。
また、51年度から専門家からなる検討会を設け、排出防止技術等を中心に検討を行い、その結果が53年末にまとまったので、これらの成果を踏まえ、規制の効果、実施等について具体的に検討を進めているところである。
イ その他の物質
大気汚染の原因となる可能性のあるその他の物質に関しては、必要に応じ、順次、文献情報の収集及び整理並びに測定法、排出実態、環境濃度等の調査を行うこととしているが、これらの物質のうち、52年度、53年度は、フタル酸エステル、アスベスト及びアクリロニトリルの排出実態調査を行った。
これらの調査の結果及び有害性に照らし、必要に応じて今後の対策を検討することとしている。
また、54年度以降の引き続き有害性のある物質について逐次排出実態調査を行う予定である。