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第2節 

2 今後の方向

 快適な環境へのニーズは、今後も都市への人工集中、所得・余暇の増大等を通じ、ますます強まることが予想されることから、地域に自主的な活動とともに、国及び地方公共団体が一体となって積極的に対応していかねばならない。その際にあっては、次のような視点を踏まえて、快適な環境の形成を図っていることが必要である。
 第一に快適な環境づくりは基本的には、各地域における住民の積極的な活動を中心として進められることが望ましいと考える。それは、いかなる環境が快適か、どのような施策が有効かについては個々の地域における社会的、歴史的、自然的条件によっておのずと異なってくること、また、快適な環境づくりは、地域ごとの住民の生活環境の改善への多様なニーズを反映したものであり、これまでの経験からして住民の自主的な活動によって成功してきた事例が多いと考えられるからである。
 その際、国及び地方公共団体としても
? 各種の快適な環境づくりの事例紹介等を通じ、快適な環境づくりの国民的な気運を盛り上げていくこと
? 地域住民の自主的な活動に対する表彰制度、専門家としての助言等によって積極的に支援していくこと
? 快適な環境づくりを一定の地域を選んでモデル事業の形で推進していくこと
 等が必要となろう。
 第二に、国及び地方公共団体としても、環境に係る個々の政策を推進するに当たって快適さの実現を図るという視点を加味していくことが必要である。例えば、公害対策にあっては、騒音・振動防止や水質汚濁防止等の対策を快適な生活環境の確保の視点から積極的に推進し、静かで、美しい水域環境のある生活環境をつくっていくことが要請される。また、自然環境の保全施策においては、自然環境をより美しい状態で保全する視点が求められている。
 そして、自然環境等の利用を図る野外レクリエーション施設等の整備に当たっても、これらの場所を単に余暇時間を過ごす場として考えるのではなく、自然を探究する場として知的かつ創造的な視点を加味していくことが快適さにつながるであろう。
 また、計画的な街づくりを行う際にあっても、単にハード面の計画的な施設配慮を考えるだけでなく、そこの住む住民が快適さを感じられるような環境をつくるというソフト面における配慮も必要とされよう。
 第三に、このように、個々の環境政策の中に快適性の視点を加味していくと同時に、これらの施策を計画的・総合的に推進していくことが必要である。
 例えば、自然景観の豊かな街にあっても、建物の形状、色彩、配置などが適切でなければ、必ずしも美しい町並みの景観を形成することにはなり得ず、また逆に美しい近代的な建物群の並ぶ街にあっても、緑のない街は、魅力ある街とはならないであろう。そしてまた、歴史的な環境が保存されている街であっても、そこに住む人々の生活環境施設等が貧しいものであれば魅力ある街とはならないであろう。
 したがって、環境の諸資源を適切にかつ質的にも水準の高い状態で保存し、快適さを実現していくための計画的、総合的な視点が必要である。
 第四に、自然及び歴史的環境の保全等に当たっては、それらの環境がいったん破壊されると、その再生を図ることは不可能となるか、あるいは長時間を要することから、ある程度、先行的に保全施策を展開していくことが求められているといえる。
 そして、このような快適な環境が最終的に各地域に形成されていけば、住民の間に、その地域に住むことに対する誇りや郷土愛がおのずと芽ばえ、定住志向も高まり、その地域の環境を保全していく思想も育まれていくのである。そのような美しく魅力ある地域社会の形成を目指し、環境政策を展開していくことが今後強く要請されているのである。

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