3 環境における快適性の視点
今日、関心の高まってきている環境における快適性の視点は次のような見方からも、今後ますます重要なものとなってくることが予想される。通常、望ましい生活環境に必要な条件は、安全であること、衛生的であること、便利であること、そして快適であることの4点にあるといわれている。この中で快適性は、安全、衛生、利便の水準の相互バランスの上に立って求められるという意味で、これら三つの条件を総合的に視野に入れた、環境についてすぐれて包括的な評価を含む概念となっているといえよう。すなわち、安全性、利便性などを単にその観点からのみ追求していくと必ずしも快適性が確保されないが、逆に、常に快適性の観点から、これらの条件を吟味していくことによって、より質の高い環境づくりが可能となるのである。
しかしながら、安全、衛生、利便については、比較的、人々の間に共通の認識があり、かつ、客観的にもその状況をは握しやすいものとなっているのに対し、快適性については、それが極めて主観的な概念であり、状況のは握も難しいものであるといわれている。
しかし、全国各地で見られる快適な環境づくりの運動を見ると、快適性の概念は、地域ごとの魅力や住みよさという形で、ある程度、地域住民共通の内容をもった概念となっているように思われる。それは、それぞれの地域における環境に対する快適さの感覚は、地域における共通の財産である自然環境、歴史的・文化的環境そのものによって育まれるという面があるからであろう。
快適な環境をつくる活動の分野を、これまでの環境政策の展開に沿って例示してみると、およそ次のようになる。
(1) 自然環境の保護と創造
〇 市街地の緑の確保
公園緑地・街路樹等の整備、生産緑地・樹林地等の保全、公共施設・民有地の緑化等
〇 水辺のある生活環境の確保
浜辺・河川敷・池等の確保、水質浄化対策、ごみ対策等
〇 沿道景観の保全
沿道緑地の確保、広告の制限等
〇 自然景観の保全
広告の制限、建物や道路等の建設規制及びデザインの洗練、ゴミ対策等
(2) 歴史的環境の保全
歴史的建築物・場所・景観等の保全
(3) 町並み景観の保全
建物や広告デザインの洗練、広場・緑とオープンスペースの確保等
(4) 野外レクリェーション施設等の整備
宿泊施設の充実、自然歩道・サイクリングロード等の整備