3 環境影響評価の事例−本州四国連絡橋(児島・坂出ルート)
(1) このような環境影響評価の定着化を背景として、これまで大規模な開発計画の決定や個別事業の実施に先立って数多くの環境影響評価が行われてきたところである。ここでは、大規模開発に関する環境影響評価の具体的な実例として、本州四国連絡橋(児島・坂出ルート)について環境影響評価がどのようになされたかを見たい。
52年4月26日政府は本州四国連絡橋ルートを児島・坂出ルートとすることを内定し、当該ルートについては早急に環境影響評価を進めることとした。環境・建設・運輸の三省庁は適切な環境影響評価の実施を図るため、環境庁は「児島・坂出ルート本州四国連絡橋事業の実施に係る環境影響評価基本指針」(以下「基本指針」という。)を、また、建設・運輸両省は「本州四国連絡橋(児島・坂出ルート)に係る環境影響評価技術指針」(以下「技術指針」という。)及び同技術指針実施細目(以下「実施細目」という。)を本州四国連絡橋公団(以下「公団」という。)に提示した。
本ルートは道路、鉄道併用橋として計画されており、道路は、岡山県早島町で国道2号バイパスから分岐して倉敷市鷲羽山付近で下津井瀬戸を渡り坂出市で国道11号バイパスに連絡する。鉄道は倉敷市木見地内から倉敷市鷲羽山まで鉄道単独で通過し、これより坂出市番ノ洲まで道路との併用橋となり、宇多津町に連絡する(第2-7図)。
(2) 環境庁の「基本方針」(52年7月20日)においては、基本的な考え方として関係地方公共団体との緊密な連携のもとに、環境に及ぼす影響について予測及び評価を十分に行い、その結果を公表して地域住民等から、環境保全上の意見を聴取し、これをを環境保全のため構ずべき措置に反映させる必要があるとして、その環境影響評価の手順を示すとともに、予測及び評価の実施に際しての留意事項として、環境影響を検討すべき対象地域、対象事業の範囲、調査項目、環境保全目標等についての考え方及び大気、水質、自然環境等、個別の環境質ごとの詳細な留意事項(40項目)を示した。
(3) 公団は「基本指針」、「技術指針」及び「実施細目」に基づいて評価書案を作成し、両県知事と協議して縦覧及び説明会等の実施方法を定めた上、52年11月19日評価書案を公表した。公団は、両県知事、関係市町長及び環境庁長官から意見を求めるとともに、この実施方法に従って県庁、市庁、町役場等において同案を3週間にわたり関係住民に縦覧したほか、説明会を12回開催した。説明会には、約2,200名の参加者があり、数多くの意見が述べられた。更に、縦覧開始の日から4週間にわたり関係市町の住民からの評価書案に対する意見等の提出が行われた(1925通)。そして、公団は、両県知事、市町村長及び関係住民の環境保全上の意見を踏まえ、更に環境庁長官の意見に基づき、必要な補完・修正を行い最終的に評価書を取りまとめるとともに、提出された意見の内容を160項目に整理し、これに対する公団の見解を付した「環境影響評価書案への意見に対する見解」をまとめ公表(53年5月4日)した。その後、53年9月には自然公園法に係る協議を了し、53年10月10日現地において起工式を行い、事業着手の運びとなったものである。