1 植生自然度の現状
植生自然度とは、人間の開発行為によって自然がどの程度改変されているかを植生の状況によって分類し、客観的に国土の自然環境の現況を表すものである。1キロメッシュで植生自然度に見合う10種類の色により植生自然度を色分けして我が国の植生の現況を視覚的に見てみよう(巻末第1-12図)。
これによると、名古屋と福井とを結ぶ線から西南の地域について見ると、この地域本来の自然植生は、いわゆる照葉樹林であるが、この自然植生はほとんど見当たらず、あっても点として散在している程度であり、この地域においては、本来の自然植生が既にほとんで姿を消してしまったことを示している。これと対照的なのは名古屋と福井を結ぶ線から東北の地域で、本来の自然植生が不連続ながらもある程度塊状にまとまって、奥羽山脈や北アルプスなどやや日本海側に片寄りつつ残っている。それらは、照葉樹林とは異質な落葉広葉樹林や針葉樹林である。そしてこれらの自然植生の地域を取り囲むように二次林の地域が広がっている。一方、北海道地域には本来の自然植生がかなり残っている。また、人工林の多いのは東海、九州、四国、中国地方及び紀伊半島などである。更に、緑のない都市砂漠は東京から大阪まで太平洋岸を帯のように広がっている。