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第1節 

4 その他

 (悪臭)
 悪臭は、人のきゅう覚に直接訴え、生活環境を損なう公害であるため、例年騒音に次いで苦情件数が多い。52年度における悪臭に対する苦情件数は16,676件であり、苦情の業種別内訳では畜産農業に対する苦情が全体の32%と大きな割合を占めている(第1-11図)。
 (土壌汚染)
 土壌汚染は大気汚染、水質汚濁等を媒介として発生するもので排煙や排水中に含まれる重金属等の有害物質が土壌に蓄積し、それにより長期間にわたり農作物等に悪影響を与える、いわゆる「蓄積性汚染」の典型である。
 土壌汚染については「農用地の土壌の汚染防止等に関する法律」(土壌汚染防止法)で特定有害物質に指定されているカドミウム、銅、砒素について、汚染地域及び汚染のおそれのある地域について調査を行っており、52年度までの調査によると、カドミウムについては30都道府県85地域、推定汚染面積約5,900ha、銅については21道府県36地域、約1,170ha、砒素については6府県12地域、約360haとなっており、重複を除くと全体としての土壌汚染地域は35都道府県120地域、推定汚染面積は約6,390haとなっている。
 これらの地域については、土壌汚染防止法等に基づく所要の対策が講じられている。土壌汚染防止法に基づく指定地域としては、54年2月1日までにカドミウム37地域、銅9地域、砒素1地域の計39地域、面積にして約4,460ha(うち農用地約3,980ha)が指定されており、このうち25地域、約1,910haについて対策計画が策定され、客土、排土、水源転換等が実施されている。また、県単独事業等により35地域、約290haについて対策が講じられているほか、その他の地域についても調査や地域指定の検討が進められている。
 (地盤沈下)
 地盤沈下は、地下水の過剰な採取を原因として生ずるものと考えられているが、地形、地質、土地利用等の状況が地域ごとに大きく異なるため、地域によって沈下の程度及び被害の状況が大きく異なるという極めて地域的特性の強い公害となっている。
 現在、地盤沈下が認められている主な地域は、全国で34都道府県、58地域であり、これまで沈下が認められた地域の面積は約8,000km
2
(国土面積の約2%)、ゼロメートル地帯の面積は約1,000km
2
を占めるに至っている。
 全国的に見れば、全般的にはほとんどの地域において、沈下の鈍化傾向が続いており、特に、かつて激しい沈下を示した大都市地域の大部分の地域及び一部の地方都市では、地下水採取規制及び水源転換の結果、沈下の速度がかなり鈍化の傾向にある。しかし、関東平野南部のうち埼玉県所沢市を中心とする地域、濃尾平野の愛知県及び三重県にまたがる地域、大阪府泉州地域等の大都市近郊のほか山形盆地、筑紫平野(特に佐賀県白石平野)等の地域においては、なお相当程度の沈下が現に進んでいるところもある。
 多くの地盤沈下地域では、建造物、港湾施設、農業用施設等に被害が生じているほか、ゼロメートル地帯では、洪水、高潮等による災害の危険性が高まっている地域も少なくない。
 (廃棄物)
 廃棄物は、し尿や家庭ごみ等の主として日常生活に伴って生ずる一般廃棄物と汚泥、廃油などの企業等の事業活動によって生ずる産業廃棄物に分類される。
 一般廃棄物の大部分を占めるごみ及びし尿(し尿浄化槽汚泥を含む。)の51年度の計画処理区域内における発生量は、それぞれ4,063万t、3,967万klとなっている。
 産業廃棄物の発生量については、製造業(電気業、ガス業を含む。)からの発生量は年間2億2,700万t(通商産業省が52年に主要企業約5,000工場を対象に行った調査による51年の推計量)、全産業としては年間約3億2,000万t(45年から49年にかけての調査による。)といわれている。
 廃棄物の処理については、51年に「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」の改正による規制の強化が行われるなど、廃棄物の適正な処理を確保するための措置が講じられているが、毎年の公害事犯件数において廃棄物の不法投棄の件数が依然として過半を占めているなど、その適正な処理の確保が問題となっている。

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