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第2節 

2 その他の健康影響に関する調査研究

(1) 自動車道沿道住民健康影響調査
 交通量が多い幹線道路あるいは高速自動車道の沿道周辺に居住する住民の中に、自動車排気ガス及び自動車騒音による健康影響が問題となった。
 このため、昭和50年10月から12月にかけて、兵庫県の国道43号線沿いの1地区と川崎市の東名高速道路東京料金所周辺の2地区、計3地区を対象に交通状況調査、環境調査、健康影響調査及び生活環境に関する意識調査を実施し、昭和52年8月に公表した。
 この結果を要約すると、次のとおりである。
? 環境調査について
 兵庫地区の大気汚染物質の濃度は、道路から離れるに従って減少し、走行量と比例する傾向がみられたが、川崎地区ではこの様な傾向はみられず、全体としてほぼ同じレベルの汚染状況にあると考えられた。
 また、兵庫地区における騒音については、道路から離れるに従い減少する傾向がみられたが、川崎地区においては比例直線的な距離減衰が認められなかった。これは、川崎地区が、地形的に入りくんでいることや、中層集合住宅地区であるため、大気汚染物質の停滞、騒音の反射などによるものと思われる。
? 健康影響調査について
 「持続性のせき」、「持続性のたん」、「持続性のせきとたん」の有症率は道路に近い地区に高い傾向が認められたが、汚染の程度との関係で一定の傾向は認められなかった。
 また、聴力検査の結果では、道路に近い地区で40歳代と50歳代において一部の周波数帯で聴力の低下が認められ、統計学的にも有意の差があった。
? 生活環境に関する面接質問調査の結果によると、不快感、迷惑感や「頭が重かったり、痛かったりする。」等の身体的訴えと騒音とが関連していることが明らかとなった。
(2) その他の研究
 環境庁においては、大気汚染、水質汚濁等の人体に及ぼす影響について科学的な調査研究を推進するため、前記イタイイタイ病及び慢性カドミウム中毒に関する総合的研究を始め、水俣病に関する総合的研究のほか、大気汚染に係る人体影響の評価方法に関する研究、重金属による人体影響についての臨床医学的研究、難分解物質の人体影響に関する研究、人体臓器中の化学物質の検索に関する研究等基礎的研究を、試験研究機関、大学等の研究者に委託して行っているところである。
 なお、52年2月に調査結果を公表した複合大気汚染健康影響調査については、専門学者による研究班において、学問的見地からの解析、評価を行っている。

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