1 瀬戸内海の汚濁の現況
瀬戸内海は優れた自然の景勝地、漁業資源の宝庫としての特性を有する反面、その周辺に産業及び人口が集中する閉鎖性水域であることから特に水質の保全等が強く要請されている。
瀬戸内海の水質の状況をみると、有害物質による汚染については有害物質が環境基準値を超えて検出される割合は全国的にも減少傾向にあるが、瀬戸内海においては更に低い水準で推移し、50年以降は0.04%となっている(第3-5-1表(1))。
CODの環境基準に対する適合率の推移をみると、46年の70%から47年に上昇して以来80%台を維持し、51年は82%であった。(第3-5-1表(2))。
また、47年以降実施している瀬戸内海総合調査の結果によると、47年当時と比べCODが3ppm以上の測定点が全測定点に占める割合が減少しており、2ppm以下の割合が増加の傾向にある(第3-5-2図)。
更に、主要な工場地帯付近における水質は、45年以前に比べて改善されているものが多くなってきている(第3-5-3表)。
このように瀬戸内海におけるCODに関する水質は改善の方向にはあるが、環境基準に対する適合率は、広域的な閉鎖性水域を除く海域より低く、今後とも水質保全の努力が必要である。
一方、瀬戸内海は、窒素、リン等の栄養塩類が流入するとともに、それが蓄積するといういわゆる富栄養化の傾向を示している。
また、赤潮はここ数年広域的に多発しているが、52年は発生件数が前年よりかなり減少した。これは全般的に水温が低かったこと、春期における発生件数が少なかったこと等によるものであると考えられるが、8月の播磨灘における大規模赤潮による魚類養殖業等への漁業被害のほか、大阪湾での海水浴場利用障害等の被害も生じている(第3-5-4表)。
瀬戸内海における油による海洋汚染の発生件数は47年の874件から52年には467件と大幅に減少しているものの、なお全国の約35%を占めている。
これらを総合すると、瀬戸内海における水質は、すう勢的には改善の方向にあると思われるが、なお、有機物による汚染、富栄養化の過行など多くの問題を残しており、今後とも更に施策の強化を図っていく必要がある。