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第2節 

1 環境影響評価の推進

(1) 環境保全を未然に防止し、良好な環境の確保を図るための措置として環境影響評価に寄せる国民の期待と関心には大きいものがあり、適切な環境影響評価の実施のための制度等の体制の整備を図る必要がある。
 従来、開発行為等の実施に当たって、地域の地理的特性、自然条件についての検討の不足や環境汚染物質による環境影響と環境受容能力に関する調査検討の不足等多くの要因から、様々な環境問題を引き起こしてきた。また、近時、国民の価値観の多様化や環境に対するニーズの高まりもあって、開発行為等に伴う環境問題は、社会的問題をもたらす大きな要因となっている。
 このような環境問題に対処するためには、環境汚染が生じてからその対策を講ずるということでは十分ではなく、開発行為等が環境に及ぼす影響について、あらかじめ検討を行い、環境の保全に十分配慮する必要があることから、開発行為等が環境に及ぼす影響について事前に調査、予測及び評価を行うとともに、これに対する地域住民の意向のは握を行う等の手続きを内容とする環境影響評価制度の確立を図ることが要請されている。
(2) これまで、環境汚染の未然防止の観点に立って、昭和40年度から大規模工業開発予定地域を対象として産業公害事前調査が実施されており、また、47年6月の閣議了解「各種公共事業に係る環境保全対策について」に基づき、各種公共事業について環境影響評価の実施が推進されているほか、48年の第71回国会においては、「公有水面埋立法」の一部改正、「瀬戸内海環境保全臨時措置法」の制定等各種法令の関係規定の整備が図られた。更に、河川計画、港湾計画、土地利用基本計画における開発保全整備計画等環境に著しい影響を及ぼすおそれのある事業、計画等について環境保全の観点から検討が行われている。
 このように、我が国においては、各種公共事業、大規模開発等の事業の実施に際しては、それが環境に及ぼす影響についての調査、予測及び評価が従来より行なわれている状況にあるが、制度面から見れば、現状においては、法令等により環境影響評価の実施を義務付けられている分野は一部に限られている上、その評価手順等が十分整備されていないものもあり、また、調査、予測及び評価の結果について、地域住民等の意向をは握する体制も必ずしも十分ではないものもあるため、その制度的確立についての国民の期待と関心は強いものとなっている。
(3) また、国際的に見れば、環境影響評価制度の運営について実績を持ち、より適切な制度、運営を目指すアメリカをはじめとして、スウェーデン、カナダ、オーストラリア、フランス等の諸国において、それぞれの国情に応じ、環境影響評価の実施又は制度の確立を見ているところである。また、49年には、OECDにおいて、環境影響評価の手続、手法の確立について理事会勧告が出されている現状にあり、環境汚染の未然防止を図ろうとする環境影響評価の制度化は、国際的にも共通した課題となっている。
(4) このような状況のもとで、環境影響評価の制度的なあり方について、50年12月、中央公害対策審議会環境影響評価制度専門委員会が「環境影響評価制度のあり方について(検討結果のまとめ)」をまとめており、これを基礎に、同審議会環境影響評価部会において各方面の意見、知見を聴く等検討を進め、更に、これと並行して環境影響評価を効果的に実施するための体制整備を図るべく関係省庁において調整・協議を進めてきているところである。
(5) また、その技術手法の面については、49年6月24日付けの中央公害対策審議会防止計画部会環境影響評価小委員会中間報告「環境影響評価の運用所の指針について」において試案が示され、各方面においても参考とされているほか、大規模工業開発、港湾、公有水面埋立、電源開発等の分野でのこれまでの経験により一定の知見が積み上げられている。これらの蓄積を経て、52年7月には、本州四国間に道路・鉄道併用橋を建設する本州四国連絡橋事業について、環境影響評価を行うための手順と技術手法のガイドラインとして、「児島・坂出ルート本州四国連絡橋事業の実施に係る環境影響評価基本指針」が環境庁によって作成された。更に、関係各省庁において、それぞれの所管に係る問題について「環境影響総合解析システムの設計に関する調査研究」をはじめとして、環境影響評価に係る技術手法の向上のための調査研究が進められている。

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