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第3節 

6 今後の課題

 環境汚染による健康被害という苦い経験を持ち、問題が起こるたびごとにその事後対策に追われてきた我が国は、化学物質による環境汚染の防止という領域において、化学物質審査規制法を中心として、事前に被害を予測し、それを未然防止するという未開拓の分野に一歩踏み出したところである。
 この法律制定以降、生産・輸入される原則としてすべての化学物質について、環境汚染による人の健康被害の防止という観点から事前審査を行うという制度は、我が国が世界に先がけていち早く導入したものであるが、それだけに、このようなルールは、新規化学物質の開発、ひいては化学工業とそれに関連する産業の発展を妨げるのではないか、また、貿易上も非関税障壁と見なされるなどの問題が生ずるのではないかといった懸念もあった。
 しかしながら、化学物質の今日の世界での役割の大きさと、それに伴う安全管理の必要性に対する生産者・消費者双方の認識を背景に、この新しいルールは着実に我が国に定着しつつある。また、既存化学物質の点検作業もようやく軌道に乗ってきつつある。
 現在は、これら化学物質に関する諸施策の体系化を行っていく段階に入っている。その際、国内国外を問わず、化学物質に関する試験・研究の推進を図り、これらの試験・研究から得られた情報をいかにうまく融通し合い、現代生活の伴侶ともいうべき化学物質を効率的に管理していくかという点が、今後の大きな課題である。

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