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第1節 

4 これからの国土利用

 環境保全の観点からする適切な国土利用が欠如していたことが我が国において環境問題が深刻化した原因のひとつであるといえよう。これからの国土利用における第1の課題は、国土の計画的利用の推進である。49年に制定された「国土利用計画法」は、国土利用計画及び土地利用基本計画の策定を定めた点、我が国における国土利用政策のうえで画期的なものであろう。同法に基づく国土利用計画は今後の我が国の国土利用のあり方を示す行政上の指針ともいうべきものであるが、51年5月にその全国計画が閣議決定されている。この全国計画は、その基本方針に「国土の利用は、国土が現在及び将来における国民のための限られた資源であるとともに生活及び生産を通ずる諸活動の共通の基盤であることにかんがみ、公共の福祉を優先させ、自然環境の保全を図りつつ、地域の自然的、社会的、経済的及び文化的条件に配慮して、健康で文化的な生活環境の確保と国土の均衡ある発展を図ることを基本理念として、総合的かつ計画的に行われなければならない。」とうたい、国土の利用目的に応じた区分ごとの規模の目標及びその地域別の概要、その達成のために必要な措置を規定している。また、この全国計画を受け53年2月末現在34道県においてその都道府県計画が策定されている。更に、現在、市町村計画の策定作業が開始されている。適切な国土利用を推進するためには、国土全体から見た視点と地域社会から見た視点が有機的に結合することが必要であり、都道府県計画、市町村計画の早期策定、相互の計画のフィードバックが望まれる。
 また、土地利用基本計画は、適切な土地利用を図るために、土地利用規制、開発行為の規制、遊休土地に関する措置等必要な規制を行う際にその基礎となるものであり、都道府県知事が当該都道府県の地域について策定することとされており、全ての都道府県において策定されている。土地利用基本計画では土地の利用区分を都市地域、農業地域、森林地域、自然公園地域、自然保全地域の5地域に区分して、それぞれの地域のあるべき姿を示すとともに相互の調整等が図られることになっている。国土利用計画や土地利用基本計画はマクロな視点に立って土地利用の方向付けを行う計画であり、これらの計画に即し公害の防止や自然環境の保全にも十分配慮した適正かつ合理的な土地利用が図られるよう、諸施策を講じていくことが必要である。
 第2の課題は、住民参加の問題である。住民参加の問題は、根本的には、我が国の地方自治、行政システムのあり方、更には民主主義の根幹に触れる重要な問題でもある。国土利用といっても、基本的には、すぐれて地域の問題の集積であり、地域に関する問題は、地域の実情に応じ地域住民の意向を反映しつつ解決していくことが重要であろう。特に、地域住民の環境保全に対する要請に対する十分な配慮が必要である。
 しかしながら、現在、住民のニーズはますます複雑化、多様化しており、地域住民の全ての合意を得ることは極めて困難な状況になっている。地域住民の意見を反映して国土利用を進めるとしても、依然として少数意見をどのような形で尊重するかという困難な問題が残されている。更に、広域的要請と地域的利害の調整というより困難な問題がある。国家的見地あるいは広域的見地から必要とされる開発事業が必ずしもその実施される地域にメリットをもたらすとは限らない。また、おうおうにして都市住民の自然環境保全の要請が地域住民の桎梏となることもあろう。このように、住民参加の問題は、複雑な問題を内包しているが、こらからの望ましい国土利用のあり方を考える場合、住民参加の問題を我々は避けて通ることはできないであろう。
 第3の課題は、環境影響評価制度の確立である。開発行為等の実施に当たって、環境汚染を未然に防止するため、その環境に及ぼす影響を事前に調査、予測及び評価する環境影響評価についてその制度等の体制の整備が強く望まれている。

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