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第5節 

2 悪臭防止対策

(1) 悪臭防止法の施行状況
 「悪臭防止法」では規制地域の指定、規制基準の設定は、各都道府県知事に委任されているが、地域の都市は、51年度末現在で奈良県、大分県、沖縄県を除く44都道府県9指定都市で行われ、市町村数では、455市467町23特別区となっており、全市町村数の約31%(人口比約72%)に達している。また、規制地域の指定を行っていない県においても逐次作業が続けられている。
 規制地域の指定と同時に規制基準の設定が行われるが、その方法を見ると、大部分の都道府県及び指定都市においては、規制地域内を二分し、住居地域は臭気強度2.5に対応する濃度とし、工業地域などの悪臭順応地域は、臭気強度3.0又は3.5に対応する濃度としている。
 都道府県知事(実際は市町村長に委任)は、規制地域内の事業場の事業活動に伴って発生する悪臭物質の排出が規制基準に適合しないことにより住民の生活環境が損なわれていると認めるときは、事業場を設置している者に対して悪臭防止措置を講ずるよう改善勧告、更には改善命令を発することができることとされている。51年度中に改善勧告は12件行われており、その業種はゴム製品製造業、畜産農業、飼料製造業、敷物製造業となっているが、多くの場合改善勧告に至る前の行政指導の段階で改善効果を上げるべく地方自治体担当者の努力が続けられている。対策効果の優れた事例としては、神奈川県A市のし尿処理場、愛知県B市のコーヒー豆焙煎工場、山口県C市の魚腸骨処理上、獣骨処理場が挙げられる。
 なお、農林省の畜産経営環境保全資金(51年度30億円)や公害防止事業団の悪臭防止施設への融資(50年度31億円)等国レベルでの悪臭防止施策も進められている。
(2) 悪臭防止法政令等の改正
 悪臭物質としては、法施行時に、アンモニア、メチルメルカプタン、硫化水素、硫化メチル及びトリメチルアミンの5物質が指定された。しかしながらこれらを含まない悪臭公害には対処できないことから住民苦情に直接対応できない場合が多く、悪臭物質の追加指定が強く望まれていた。
 環境庁では、法施行後も引き続き、悪臭公害の実態、悪臭物質の測定方法、悪臭防止技術、防止設備等についての調査研究を進めてきた結果、51年9月18日に法施行令等の改正を行い、二酸化メチル、アセトアルデヒド及びスチレンの3物質を悪臭物質に追加指定し、同年10月1日から施行したところである。
(3) 悪臭の評価方法の改善
 「悪臭防止法」では現在ガスクロマトグラフ等の機器を用いて測定し、悪臭物質の濃度を規制する方式をとっているが、悪臭公害はその発生源が多岐にわたっていること、またほとんどの場合低濃度の複合臭であることから、機器測定のみで悪臭物質を測定することには限界があると考えられる。これらの問題に対処するために人のきゅう覚を用いる官能試験法についてフィールド調査も含め研究を行っているところである。
 51年度はクラフトパルプ製造業、化製場を対象としてフィールド調査を行った。

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