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第3節 

2 廃棄物処理対策

(1) 廃棄物処理規制の強化
 50年夏のいわゆる6価クロム問題を契機として第77回通常国会において、産業廃棄物処理規制の強化等を内容とする「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」の一部改正が行われ(50年6月16日公布)、52年3月15日から施行された。この改正の概要は次のとおりである。
? 事業者が産業廃棄物の処理を他人に委託する場合の基準が定められ、また、一定の事業場等を有する事業者は産業廃棄物の処理に関する業務を適切に行わせるため産業廃棄物処理責任者を置かなければならないことが義務付けられた。
? 廃棄物処理業の許可制度の整備が行われるとともに、産業廃棄物の許可業者がその処理を他人に委託することを一定の場合を除き禁止した。
? 廃棄物の最終処分場に関する構造基準及び維持管理基準が定められ、新たに設置する最終処分上について事前に届出することが義務付けられ、基準に適合していない場合は、構造の改善等を命ずることができることとなった。
? 一定の事業者等は、帳簿を備え、廃棄物の処理に関し所要事項を記載することが義務付けられた。
? 廃棄物の違法な処分により生活環境の保全上重大な支障が生じた場合等における措置命令が制度化された。
? 有害な産業廃棄物等の不法投棄に対し、罰則を加重する等罰則が強化された。
 その他所要の規定の整備が行われたほか、これれに関連する同法施行令の改正に際しては、燃えがら及びばいじんの有害物質規制の強化、有害汚でい等のコンクリート固形化基準の具体化、有害物質規制の対象となる汚でい等を排出する施設の追加等の廃棄物の処分基準の整備を行った。
(2) 廃棄物処理対策
? 一般廃棄物
 51年度においては。引き続き、し尿処理施設整備費補助74億円、ごみ処理施設整備費補助206億円をもって施設の整備拡大を図った。また、特に近年廃棄物の最終処分地の確保が困難となっている現状にかんがみ、51年度から新たに最終処分場施設の整備に対する補助制度を設け、その整備に努めることとした。
 なお、51年度においては、一般廃棄物の処理に関して、ごみ焼却場の余熱利用及び高速たい肥化等一般廃棄物処理の過程における有効利用の可能性について調査研究を行った。
? 産業廃棄物
 50年度に行われた6価クロム化合物製造工場から排出された鉱さいの埋立地及びその周辺の環境調査については、環境庁において学識経験者の意見を聴いた上、51年11月24日その結果が取りまとめられた。本調査は土壌、鉱さい、地下水、河川水、底質、植物、粉じん等を採取し、6価クロム等の項目について分析したものであり、それによると、埋立処分地内の土壌、鉱さいや地下水には6価クロムの廃棄物処分基準値を上回るものや水道水の水質基準値を上回るものが認められたが、その周辺地区から採取したものは、ほとんどが低濃度で全般的に汚染は軽微であった。ただ、一部の地域において埋立処分地に接する河川水から環境基準を上回る6価クロムが検出された。これらの汚染が認められる地域については、覆土、護岸の設置等の対策が逐次行われてきている。
 また、厚生省においては、50年度に6価クロムに係る産業廃棄物の実態調査を実施したが、51年度においては、引き続き、6価クロム以外の有害物質に係る産業廃棄物の排出及び処理状況に関する全国調査を実施した。なお、50年度の調査については、51年8月その結果が取りまとめられたが、これによれば、49年度において6価クロムを含む(そのおそれのあるものも含む。)汚でいを排出した事業所は全国で4,832か所あり、その排出量は約50万トンであった。また、6価クロムを含む(そのおそれのあるものも含む。)鉱さいを排出した事業所は全国で41か所あり、その排出量は約162万トンであった。これらの汚でい、鉱さいの処分状況は、排出量の約80%が埋立処分であり、海洋投入処分、資源化再利用、保管がそれぞれ数%となっていた。
 更に厚生省においては、50年度及び51年度において、「産業廃棄物総合処理技術開発調査研究」を行った。これは、産業廃棄物の相互利用及び熱エネルギーの高度活用を行うことによって、公害防止、環境保全対策及び省資源、省エネルギー対策に寄与することを目的として、各種要素技術の評価を基礎として、既存技術の組合せと高度化により、一定条件下における総合処理技術の開発についての提案を行ったものである。51年度には50年度に開発した総合処理技術の実用化を目指して、残された技術的課題の解明をはじめ事業実施に伴う計画手法の開発、事業経営手法、搬入管理手法、情報管理手法等について調査研究を行った。
 また、廃棄物の最終処分場をはじめとする廃棄物処理施設の整備を促進するため、公害防止事業団等の政府関係金融機関の産業廃棄物処理施設に対する融資等の措置を講じた。
 なお、廃棄物の再資源化を図り、廃棄物の減量化に資するため、民間における再資源化推進団体である(財)クリーン・ジャパンセンターでは、国の助成を受けて、千葉県市原市及び大阪市での再資源化モデル実験を援助しているほか、再資源化の啓もう普及、調査研究及び指導等を行った。
 更に、通商産業大臣の諮問機関である産業構造審議会産業公害部会に廃棄物再資源化小委員会が設置され、「資源有限時代における再資源化制作のあり方」について審議が行われ、52年3月に中間答申が取りまとめられた。

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