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第2節 

2 振動防止対策

(1) 「振動規制法」の制定
 「振動規制法」の規定するいわゆる典型7公害の1つである振動公害を規制するための「振動規制法」が51年6月10日法律第64号として公布され、関係政令、政令などともに同年12月1日から施行された。その概要は次のとおりである(第4-2-1図参照)。
? 工場及び事業場振動
 都道府県知事は、住居の集合している地域等住民の生活環境を保全する必要がある地域を指定し、指定地域における著しい振動を発生する特定施設(第4-2-2表)を設置する工場及び事業場について、指定地域の土地利用状況に応じて、環境庁長官の定めた範囲内で規制基準(第4-2-3表)を定め、所要の規制を行うこととする。このため、これらの工場及び事業場における特定施設について、事前届出制を採るほか、規制基準に適合しない振動を発生することにより周辺の生活環境が損なわれると認めるときは、振動の防止の方法等に関し、改善等の勧告及び命令を行うことができる。
? 建設工事に伴う振動
 指定地域内において行われる著しい振動を発生する特定の建設作業(第4-2-4表)については事前届出制を採るほか、都道府県知事は、一定の基準(第4-2-5表)に適合しない振動を発生することにより周辺の生活環境が著しく損なわれると認められるときは、振動の防止の方法等に関し、改善等の勧告及び命令を行うことができる。
? 道路交通振動
 都道府県知事は、指定地域内における道路交通振動が所定の限度(第4-2-6表)を超え、道路周辺の生活環境が著しく損なわれていると認めるときは、道路管理者に対し当該道路の部分につき道路交通振動の防止のため舗装、維持又は修繕の措置を採るべきことを要請しあるいは都道府県公安委員会に対し道路交通法の規定による措置を採るべきことを要請する。
? その他
 以上のほか、市町村長に対する事務委任(都道府県知事の取締り権限は実際には市町村長が実施)について定めるとともに、振動規制の実行を期する見地から、振動防止に関する国の援助、研究の推進等について所要の規定を設けている。なお、鉄道については、防振技術などについて技術的問題があり、また、走行規制が困難であることから、家屋の移転等の周辺対策を含めて騒音対策とともに、総合的施策を実施する必要があるため、本法の規制対象となっていない。


(2) 防振対策
 工場施設については、低振動機械の採用、吊基礎・直接支持基礎(板ばね、コイルばね等を使用するもの)・空気ばねなどの防振装置の設置、機械基礎の改善等により、防振対策が行われており、その効果が認められている。
 建設作業については、振動を発生する建設機械の改良のみならず、低振動工法の開発が積極的に進められている。
 道路交通振動については、防振舗装材料の開発、防振溝等の研究が進められてはいるが、一般的には路面の損傷箇所及び凹凸箇所の補修並びに舗装の打替えにより対応されている。また、最高速度規制、大型車の中央車線寄り等の交通規制による手法も道路の改良と併せて有効である。
 振動防止対策としては、以上のような対策が行われているが、今後は、発生源対策のみならず、振動の伝播減衰特性や家屋防振構造等を勘案して周辺対策を含めた総合的な都市計画、土地利用を検討する必要がある。
(3) 新幹線鉄道振動対策等
 新幹線鉄道振動については、51年3月6日の中央公害対策審議会の答申を受けて、51年3月12日に環境庁長官から運輸大臣に70dBを超える地域について対策等を講ずることを内容とする勧告(環境保全上緊急を要する新幹線鉄道振動対策について)を行った。国鉄においては前記「新幹線鉄道騒音・振動障害防止対策処理要綱」により、騒音防止対策とともに、振動防止対策も進めることとなった。
 新幹線鉄道振動の防止策としてはレールの重量化、バラストマットの敷設、タイヤフラットの未然防止等が行われている。
 なお、新幹線鉄道以外の在来鉄道振動についても前記在来鉄道騒音と併せて、振動実態調査を行っている。
(4) 低周波空気振動対策
 近年低周波空気振動による影響がクローズアップされてきている。しかし、低周波空気振動は、その発生源が多種多様(第4-2-7表)であり、その防止対策の確立が十分なされてはいないため、環境庁においては51年度に代表的な発生源についてその実態、被害程度、発生源、生活環境等への影響等の調査を実施した。

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