前のページ 次のページ

第1節 

4 新幹線鉄道騒音対策

(1) 環境基準の設定
 新幹線鉄道は39年の東海道新幹線の開業以来沿線地域において騒音、振動について生活環境保全上深刻な社会問題を起こしており、新たな新幹線鉄道建設に対しても反対運動が生ずるなど新幹線鉄道に起因する騒音等の問題について解決を図ることは重要な課題となってきている。
 このため、環境庁は新幹線鉄道騒音対策の目標となる新幹線鉄道騒音に係る環境基準を50年7月29日に告示した(第4-1-12表)。
 また、同基準の設定に引き続き、沿線都道府県知事の地域類型型の当てはめ作業が円滑に進むよう、51年度に地域類型指定のための基礎調査を各都道府県に委託して実施している。この調査に基づいて現在知事による地域指定が進められているが、51年度末現在7都府県において地域類型の当てはめが行われている(第4-1-13表)。
 また、併せて国鉄による騒音対策の実施状況を各都府県を通じて調査中である。


(2) 名古屋新幹線騒音振動訴訟
 49年3月に名古屋地区の東海道新幹線鉄道沿線の住民は日本国有鉄道を相手どって?新幹線列車の走行による騒音、振動について一定値(昼間の騒音65ホン、振動毎秒0.6ミリメートル、夜間の騒音55ホン、振動0.3ミリメートル)以上の騒音、振動を侵入させてはならないとの差止請求及び?原告ら各人に慰謝料100万円を支払えとの損害賠償請求の訴えを名古屋地方裁判所に提訴している。
(3) 対策要綱及び処理要綱
 前記、新幹線鉄道騒音に係る環境基準の円滑な達成に資するため、政府は51年3月5日に音源対策及び障害防止対策、土地利用対策等の基本方針に関して「新幹線鉄道騒音対策要綱」を閣議了解した。この要綱では、まず、音源対策が騒音の防止又は軽減を図る上で最も基本的な施策であることにかんがみ、これを強力に実施するとともに、既設新幹線鉄道、工事中新幹線鉄道及び新設新幹線鉄道について、移転補償、民間防音工事の助成等の障害防止対策を実施することとし、更に沿線地域の有効適切な利用を図っていくこととしている。
 更に、国鉄は前記対策要綱等に、基づく運輸大臣の指示を受けて51年11月25日運輸大臣に対して新幹線鉄道の騒音、振動対策についてその基本的な考え方を報告し、その中で「新幹線鉄道騒音・振動障害防止対策処理要綱」を明らかにした。
 この処理要綱は、当面の沿線地域における障害防止対策の方針として騒音レベルが80ホン以上の区域に所在する住宅、騒音レベルが70ホンを超える区域に所在する学校病院等及び振動レベルが70デシベルを超える地域に所在する住宅に対して防音工事の助成、某新工事の助成を実施するというものであり全体計画額として約1,300億円(約18,000戸)と試算している。
 なお、これまでの音源対策の実施状況は第4-1-14表のとおりであり、障害防止対策の実施状況は、50年度末までに防音工事55戸、移転補償52戸となっている。


(4) 在来鉄道騒音
 新幹線鉄道以外のいわゆる在来鉄道騒音については、その騒音レベルが場合によっては新幹線鉄道騒音を超える場合もあり、既設路線の高架化、線増、新線建設等をめぐって反対運動が起きる等問題が生じてきている。
 そのため環境庁は、50年度から在来鉄道について、騒音振動と住民意識に関する実態調査を実施している。

前のページ 次のページ