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第2節 

3 化学物質の安全対策

 PCB(ポリ塩化ビフェニル)による環境汚染を契機として48年10月「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」が制定され、難分解性等の性状を有し、かつ、人の健康を損なうおそれのある科学物質を事前に見いだし、その製造、輸入、使用等を規制することとされた。
 同法は、49年4月16日から施行され、これと前後して既存化学物質の名簿の作成、新規化学物質に係る試験の項目等の設定、特定化学物質としてのポリ塩化ビフェニル(PCB)の指定及びその使用を鉄道車両の主変圧器又は主整流器の整備に限ること等を内容とする政省令、告示等の整備が行われた。
 51年12月末現在、新規化学物質として製造又は輸入の届出があった化学物質の数は387件であり、これらについては組成、性状等に関する既知見、微生物分解度試験、魚介類濃縮度試験結果等により審査し、そのうち92件が難分解性等の性状を有しないものとして告示されている。
 既存化学物質については、その安全性を総点検する必要性から、通商産業省においては、分解性及び蓄積性の試験、厚生省においては、毒性等の試験を実施しており、環境庁においては、各種化学物質のうち、広範な使用を通じて環境中に分布する可能性のある化学物質について、環境汚染の実態をは握することを目的とした環境調査を49年度より実施している。49年度に実施された環境調査によりフタル酸エステルがかなり広範囲に環境中で存在するが、その環境濃度は、使用量から見て比較的低いと考えられること、DDT類及びHCH(いわゆるBHC)類については農薬としての使用中止後の低減化傾向が推定されたこと等の成果が得られている。50年度において実施したヘキサクロロベンゼン、有機塩素系溶剤等42物質の環境調査については現在その結果をとりまとめ中である。
 51年度においては24道府県市の公害研究所、公害センター、衛生公害研究所等の協力を得て人口密集地帯における都市河川、工業地帯における河川の水質、底質、魚介類を試料としてポリクロロナフタレン、ポリクロロターフェニル、アニリン、トルイジン、ナフチルアミン等、82物質について環境調査を実施した。
 なお、通商産業省においては、財団法人化学品検査協会化学品安全センターに微生物分解度試験及び魚介類濃縮度試験を行わせており、その結果に基づき51年12月末現在で107物質が分解性が良い又は濃縮性が低いと判明した。通商産業省においては、この既存化学物質の点検に当たっては難溶性の高分子物質や揮発性物質について更に試験法を開発してそれを活用することとしている。

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