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第3節 

2 取締りの概況

(1) 検挙件数の増加
 昭和50年中に全国の都道府県警察が検挙した公害事犯は第9-3-1図のとおり総数3,572件に達し、前年の2,856件に対比すると716件(25.1%)の増加となっている。
 これは、警察の公害事犯に対する取締り体制の強化、取締り技術の定着等によるところが大きいと思われるが、同時に地域住民及び関係行政機関の公害問題に対する関心の高さと警察の取締りに対する理解と協力が大きな要因となっている。


(2) 公害事犯の態様別及び法令別検挙状況
 50年中に検挙した公害事犯を態様別に見ると、第9-3-1表のとおりで、典型7公害のうちでは水質汚濁に関するものが1,374件(38.5%)と最も多くなっている。
 表中に「その他」とあるのは、大部分が廃棄物の不法投棄によるもので典型7公害のいずれにも属しないものである。
 また、適用した法令について見ると、第9-3-2表のとおりで、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」が2,417件と最も多く、次いで「河川法」409件、「水質汚濁防止法」291件の順になっている。


(3) 公害事犯の傾向等
 全般的に見て警察取締りの強化が、企業等の社会的責任の自覚を促し、行政施策の浸透に寄与していると見られる反面、一部には、取締りを免れるため、より一層手のこんだ悪質なやり方で違反をするものも依然として後を絶たない状況にある。
 例えば、経済不況の影響から、経費節減を図るために、せっかく設置した公害防止施設を全く使用しないで未処理の廃水を排出するとか、中和剤の使用を節約して、強酸や強アルカリの水をそのまま流すとか、最初から排水処理施設を全く設けずに未届けのままシアン等の有害物質を多量に含む廃水を流すなどの事犯があり、更に正規の排水路の外にいわゆる隠し排水路をひそかに設けるとか、夜間無人の工場から自動的に廃水等を未処理のまま流す装置を設けるといったように極めて悪質な事犯も多くなっている。
 また、産業廃棄物の不法投棄事犯がますます広域的になったり、不況下にあって許可業者による正規の処理では経費がかかり過ぎることから、安易にもぐり業者に委託し、もぐり業者は、手段を選ばず不法投棄を敢行する等、この面における手口も一段と悪質化しているなどの傾向が見られた。

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