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第3節 二国間協力等の推進

(1) 二国間会議等
 日米環境協力協定(環境の保護の分野における協力に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定)が50年8月ワシントンで調印された。これにより45年以来行われてきた日米公害閣僚会議及びそのさん下の専門家会合は発展的に本協定に吸収され、公害閣僚会議に替わって合同企画調整委員会が設置され、より緊密かつ強力な協力体制が整備された。
 本協定の概要は次のとおりである。
? 両国政府は、各種の形態の会合、科学者・専門家の訪問及び交流、合意された協力計画の実施、情報及び資料の交換等により、環境の保護の分野における協力を維持し、促進する。
? 主要な環境政策問題を討議し、協力活動を調整し、必要な勧告を両国政府に行うために合同企画調整委員会を設置する。
? 大気汚染の防止、水質汚濁の防止、海洋汚染の防止、農業排水及び農薬の規制、固定廃棄物の管理、有害物質の規制、騒音の低減等の分野で協力が行われる。
 51年2月、第1回合同企画調整委員会がワシントンで開催され、環境協力協定発効に伴う問題、合同企画調整委員会及び専門家会合の運営問題並びに環境アセスメントや環境汚染と健康影響等日米両国が当面する政策上の諸問題について意見交換を行った。
 専門家会合は、第4回下水処理技術委員会が50年10月にワシントンで、第2回光化学大気汚染委員会と第1回大気汚染気象委員会が11月に東京で、第1回有害物質を含むたい積汚でい処理委員会が11月にコルバリスで、第1回環境アセスメント委員会が51年3月ワシントンでそれぞれ開催され、技術的な問題について意見を交換した。
 50年11月、英国のクロスランド環境大臣が小沢環境庁長官を訪問し、第2回日英環境大臣会談が行われた。会談では、各環境保全分野のプライオリテイ、規制基準の設定、廃棄物処理等の問題について意見交換が行われた。また、面積が狭く、工業が発達しているという共通の特色を持つ日英両国の協力が有意義であることが再確認された。
 49年10月に締結された日独科学技術協力協定に基づく第1回合同委員会は、50年5月東京で開催された。この中で協定の運営方法等が議論され、それぞれの協力分野にパネルが設置された。「新たな環境保護技術の研究及び開発」の分野にもパネルが設置され、当面、?閉鎖性水域における富栄養化、?排煙脱硫・脱硝、?廃棄物処理について協力を進めることが合意された。
 第2回日加科学技術会議は50年5月東京で開催された。環境の保護の分野では従来から行われていた富栄養化及び油汚染防止技術の外に環境アセスメントの面でも協力することが合意された。
 自然保護の分野では、天然資源の開発利用に関する日米会議(UJNR)の一環として第9回国立公園及び同等保存地域に関する日米会議が50年5月東京で開催された。この会議では、自然環境保全のためのアセスメント、自然保護の長期計画と土地利用等5項目について議論した。この中で自然保護と開発の調整、自然保護と私権の制約問題等について意見を交換し、また、米国の帯状公園計画の概要が紹介された。
(2) 調査団の来日・派遣
 中国政府環境調査団が50年6月に来日した。調査団は約1か月滞在し、我が国の環境政策等を調査し、関係者と会談し、公害防止施設等を見学した。スウェーデンからは、政府製鉄公害防止技術調査団が50年8月に来日し、製鉄業に関する我が国の公害問題、対策・技術等を調査した。50年7月にはカナダ水俣病代表団が訪日し、11月には同国オンタリオ州水銀中毒問題調査団も来日した。
 また、我が国からは51年3月、タイ国メクロン川及びターチン川の第2回水質調査団が国際協力事業団から派遣された。今回は49年行われた第1回調査の結果を踏まえ、主として工場排水の調査及び技術指導を行った。
(3) セミナーの実施
 発展途上国における環境破壊の未然防止に資するため、第1回環境技術セミナー及び第3回環境行政セミナーが実施された。環境行政セミナーは、上級行政官を対象に政策問題を中心として概観的に行われるセミナーであるのに対し、環境技術セミナーは、特定の分野について技術問題を中心に、中堅クラスの研究者の育成を目的として行われるセミナーである。最近発展途上国においては水質汚濁問題が深刻な問題となっていることもあり、当面環境技術セミナーは水質汚濁関係の技術問題を中心としたセミナーを行うこととし、今回は、環境アセスメントや土壌汚染等についても日本の事情が紹介された。また、環境行政セミナーにおいては日本の環境問題全般について、環境基準、排水基準や防止対策等を紹介し、講義と見学を有機的に結合するよう配慮した。
(4) 海外広報
 海外広報活動については、ストックホルム会議以来積極的に進めてきているが、英文環境白書の作成、JapanEnvironment Summaryの定期的刊行、英文法令集の整備等を通じて、諸外国に対する広報活動の充実を図った。
(5) その他
 我が国における環境政策の発展、特に総量規制や公害補償制度等の進展を反映して、各国政府や国際機関からの情報提供、研修あるいは技術協力の依頼等がひんぱんに寄せられた。50年度においては、新聞記者等ジャーナリストの訪問が増加したことが特色として挙げられ、その問題意識も極めて多岐にわたったが、これらについては積極的に情報提供等要請に応じるよう努力した。

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