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第4節 国立公害研究所の整備

 国立公害研究所は、昭和49年3月15日環境庁の附属機関として筑波研究学園都市に設立された。以来我が国における環境科学研究に中心的役割を果たす機関として、その整備充実が積極的に推進されてきたが、50年度においても、機構定員面で環境保健部、総務部及び技術部の3部が新設され、施設面でも、植物実験用環境調節施設(植物トロン)の完成をみるなど、研究及びその支援体制並びに施設の整備が進められた。また、これらの施設整備の進ちょくに伴い、一部の研究部門が本格的な試験研究に着手したほか、その他の部門においても、その基礎的な業務及び調査研究を着実に進めているなど、所内における調査研究活動は一段と活発化してきている。
(1) 機構定員
 50年度においては、これまで発足した総合解析部及び計測技術部など7部に加え、新たに、環境汚染が人の健康に及ぼす影響について社会医学的側面から研究を実施する環境保健部を新設するとともに、既設研究部門においても、大気環境部大気環境計画研究室等6研究室(研究グループを含む。)を増設し、研究体制の整備拡充が図られた。
 また、これら研究体制の整備にあわせ、管理部門に総務部を新設し、研究所の機構定員の拡大と研究活動の活発化に伴って増大する管理業務の円滑な処理とその責任体制を確立したほか、更に、植物トロンをはじめとする各種大型研究施設の効率的な使用と、その適切な管理運営を図るため技術部を発足させ、研究支援体制の整備を図った。この結果、機構は、10部26室2課に整備され、定員も50年度中に43名増員され、年度末定員は128名となり、研究機能は一段と充実強化された。
(2) 施設整備
 筑波研究学園都市に30haの用地を確保し、昭和47年度以来49年度末までに、研究第1棟、管理棟、共通設備棟及び廃棄物処理施設等の整備が完了した。
 50年度においては、これらの基礎的施設に引き続き、大型研究施設として、植物トロン、動物実験用環境調節施設(動物トロン)、水環境実験施設(アクアトロン等)及び大気化学実験施設(光化学スモッグチャンバー)等の建設を進め、このうち植物トロンが完成した。このほか、50年度新規事業として、研究第2棟及び大気物理実験施設(大気成層風洞)等の建設に着手するとともに、施設の完成、研究室の増加等によって必要となる各種実験研究用機器の整備を図ってきた。
 50年度に完成した植物トロンは環境基準レベルの極低濃度汚染物質を長時間、任意の濃度で植物にばく露し、これに与える影響について実験のできる点で、世界有数の高性能を誇るものであり、これを使用しての試験研究は、幅広い環境科学の領域において国立公害研究所の特色のある研究分野として、大きな期待が寄せられている。
(3) 研究成果等
 国立公害研究所は、50年度においては、環境科学研究の幅広い対象領域のうち特に、
? 環境汚染が人の健康に及ぼす影響に関する研究
? 生物環境に関する研究(生態学的研究)
? 環境汚染機構の解明に関する研究
? 環境汚染に関する監視測定技術に関する研究
? 環境に関連する知見を活用した総合解析研究
 等の分野に重点を置いて課題を選択し、環境行政の方向付けに重要な研究を行うという基本的な方針の下に、行政部門との有機的な連けいを保ちつつそれぞれ基礎的な調査研究を進めてきた。これとともに、新規に大型研究施設の建設に着手する部門ではその設計に備え、また、完成近い大型研究施設を有する部門では、その本格的な使用に備えての準備的な調査研究に取り組んできた。
 特に50年12月に、当研究所の中心的施設の一つである。植物トロンが完成したため、生物環境部等の関連研究部門においては、これまでの準備的な調査研究の上に立ち、新たに、大型の特別研究の企画に着手した。
 また、計測技術部においては、大気、水、生物体中に含まれる重金属その他各種元素を同時に自動的に分析する機器に関する研究等に着手したのをはじめ、総合解析部にあっては、行政部局との密接な連けいの下に、環境影響評価の運用上の具体的方法の確立のための基礎的な研究等を開始し、大気環境部においては、大気化学実験施設の完成に備え、その予備的研究として、小型スモッグチャンバーを用いた光化学反応に関する基礎的研究等を実施したほか、水質土壌環境部で陸水域における富栄養化機構の解明に関する研究等を、環境生理部で環境汚染が生体に及ぼす影響についての生理学的研究等を開始した。
 更に、環境情報部において、49年度末に導入した大型電子計算機を使用し、所内計算センターの機能を具備したほか、引き続き環境関連情報の収集に努めるとともに、これら情報の収集、加工、蓄積、検索等の環境情報システムについて検討を進めている。また、国連環境計画(UNEP)に基づく国際情報源照会制度(IRS)の国内拠点として活動を開始すべく所要の準備を進め、49年度末に実施した「環境科学研究に関する調査」についても、その分類整理を完了した。
 このほか、環境庁の一括計上に係る国立試験研究機関の環境保全・公害防止研究の総合研究プロジェクトの推進に積極的に参加するとともに、環境庁が、地方公害研究所等の研究者を対象として実施した「第2回環境保全・公害防止等研究発表会」(51年1月)の運営に当たっても、重要な役割を果たすなど他の試験研究機関との連けい体制の強化に努めた。

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