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第2節 

2 その他の健康影響調査

(1) 健康被害診断基準の設定
 健康被害発生時における迅速、的確な対策の推進に資するため、各種環境汚染物質の健康影響について調査し、その診断方法及び診断基準を設定することが必要であり、このため50年度は、セレンについて基準設定の基礎資料を得ることとして調査を行った。
(2) 複合大気汚染健康影響調査
 ばい煙等による環境汚染の人体影響を疫学的に調査し、汚染の態様と人体影響との関連性のは握、汚染の態様に即応した地域的健康管理体制の確立及び今後予測される汚染物質による影響に関する資料を得るために45年度を初年度として5か年計画で千葉県、大阪府及び福岡県からそれぞれ対象地区を選び健康調査及びSOX、粉じん、NOX等の環境調査を行い、49年度で調査を終了したので、この5か年間の調査結果の総合的な解析評価を行っている。
(3) 有害物質健康影響調査
 蓄積性有害金属等の環境汚染の態様と健康影響との関連を明らかにし、自然界における金属等の常在値をは握するとともに、汚染物質による健康影響を事前に予測し、健康被害地における適切な保健対策を推進するために必要があるので、50年度はクロムを対象物質として基礎資料を得るべく茨城県、大阪府及び兵庫県に委託して調査を行った。
(4) 自動車道沿道住民健康影響調査
 高速自動車道等の沿道周辺に居住する住民に対する自動車騒音及び自動車排出ガスによる健康影響が問題となっている。
 このため、沿道周辺に居住する住民の健康影響について大気汚染及び騒音による環境汚染との関係を明らかにするため、川崎市及び兵庫県の協力を得て東名高速道路東京料金所周辺及び国道43号線の調査対象地域を選定し、今後の公害防止対策の基礎資料を得るべく健康調査及び環境調査を実施した。
(5) 6価クロム化合物含有鉱さいに係る環境汚染による健康影響問題
 50年7月以来の6価クロム問題を契機として、6価クロム化合物含有鉱さい埋立処分地等周辺地域住民の健康影響問題について早急に対策を講じる必要が生じたため、環境庁としては50年8月23日「6価クロム化合物含有鉱さいに係る地域住民健康影響問題関係都道県市担当課長会議」(北海道、埼玉県、千葉県、東京都、三重県、広島県、山口県、徳島県及び北九州市)を開催し、関係都道県市の健康調査計画の実状をは握し対策を協議した。この会議の要請を受けて50年9月12日「クロムに係る健康影響調査検討打合会」を発足させ、クロムによる環境汚染が認められる場合の地域住民を対象とした健康調査方式の検討を行い50年12月上旬「クロムに係る地域住民健康調査方式」を策定し、これにより指導を行った。
 環境庁としてはその調査結果の取りまとめを待って、最終的な報告を得た上で「クロムに係る健康影響調査検討打合会」の専門的な検討を踏まえてクロムに係る地域住民の健康影響問題について判断を加えるとともにその結果に応じ対策を検討することとしている。
(6) 大阪空港周辺における航空機騒音健康影響調査
 大阪国際空港周辺地域において航空機騒音の健康への影響が問題となっていることにかんがみ、同空港周辺(兵庫県)において聴力、母子健康及び学童体格の調査を実施し、これらに関する航空機騒音による健康影響の実態を疫学的に明らかにするため、49年度に兵庫県に事業を委託した。
 この調査結果について「航空機騒音健康影響研究班」において解析評価が行われることとなっている。
 また、同空港周辺地域住民に航空機の排出ガス若しくは騒音との関係で鼻出血が多発しているのではないかという訴えに関して実態を明らかにするため、昭和49年度に大阪府及び兵庫県に委託して健康調査、排出ガス調査、騒音調査を実施した。
 その調査結果については、関係専門家よりなる「鼻出血問題調査委員会」において解析評価が行われることとなっている。

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