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第6節 

3 鉱害防止対策

 金属鉱業等においては、鉱害を防止するため、「鉱山保安法」に基づき所要の施策を講じている。しかし、過去長年月にわたる金属鉱業等の操業の結果、カドミウム等の重金属が土壌等に蓄積されることによって生じた、いわゆる蓄積鉱害は、各地で健康被害、農業被害等の問題を生じ、大きな社会問題となっている。
 このような蓄積鉱害に対して、国民の福祉の向上、環境保全の観点から、積極的かつ早急に適切な施策を講ずることが必要であり、このため、50年度は、蓄積鉱害に対する抜本的対策の確立を図るべく、鉱業審議会答申(49年7月)の趣旨に沿い、いかに述べる施策を講じた。
(1) 休廃止鉱山鉱害防止工事の促進
 鉱害防止義務者が不存在又は無資力の休廃止鉱山に係る鉱害防止のため、地方公共団体が実施する坑道の坑口閉そく、捨石又は鉱さいの集積場の覆土、植栽、坑水処理施設の設置等の鉱害防止工事に対しては、工事費の3分の2を補助金として交付してきたが、50年度においては、工事の促進及び地方公共団体の負担軽減を図るため、補助率を4分の3に引き上げた。
 50年度は、鉱害防止工事(たい積場の覆土植栽)42鉱山、危害防止工事(坑口閉そく)400坑口、坑廃水処理7鉱山、維持管理70鉱山についてそれぞれ実施した。
(2) 金属鉱業事業団鉱害部門の拡充
 金属鉱業事業団では、従来から「金属鉱業等鉱害対策特別措置法」に基づく使用済特定施設(使用を終了した坑道及び捨石又は鉱さいの集積場)に係る鉱害防止事業に必要な資金の融資、債務保証業務、鉱業権者等が積み立てる鉱害防止積立金の管理業務等を行ってきた。50年度は、新たに公害防止事業費事業者負担法に基づく負担金に対する融資制度を創設し、公害防除土壌改良事業の促進を図るとともに、これまでの業務に加えて鉱害防止技術のための調査研究業務及び地方公共団体の実施する鉱害防止事業に対する指導支援業務を実施した。
 これら鉱害防止業務の増大に伴い、金属鉱業事業団の機構を大幅に拡充した。
(3) 休廃止鉱山鉱害調査
 我が国には約6,000の休廃止鉱山が存在すると推定されるが、これら休廃止鉱山すべての実態をは握すべく、45年度から4か年計画で緊急度の高い休廃止鉱山1,050鉱山について調査を実施してきたところである。しかし、調査が進むに従いこれら以外の休廃止鉱山においても鉱害問題が発生し、また、従来予測されなかった鉱山から有害重金属が随伴して生ずる事実が明らかになった。このため、従来調査対象の予定にされていない休廃止鉱山すべての実態のは握が必要となり、48年度から地域事情に詳しい地方公共団体にこれら休廃止鉱山の調査を委託することとした。50年度も引き続き本調査を実施した。
 また、49年度の調査の結果により、問題のある鉱山については鉱山保安監督局(部)で精査を実施し、これら調査の結果により更に問題のある鉱山については、鉱害防止巡回検査の対象とし、鉱害発生の危険性に応じた頻度で検査を実施することにより、鉱害防止に万全を期している。
(4) 金属鉱業坑廃水対策調査
 金属鉱業等の操業に伴って、坑内水、選鉱製錬廃水、たい積場からの浸透水等が排水されるが、そのままでは一般に水質が悪く、坑廃水処理が必要な場合が多い。また、操業を停止した後でも金属鉱山の特殊性により相当長期にわたって、坑廃水処理を実施しなければならない。更に、坑廃水の処理によって生ずる沈でん物の処理も問題となる。
 このような問題を内包する休廃止鉱山、特に大規模な休廃止鉱山の鉱害防止工事については、技術的観点のみならず、当該地域の経済的、社会的諸条件も考慮に入れ、その抜本的対策を確立する必要がある。このため、50年度は個別の大規模休廃止鉱山について、総合的対策の検討を行うとともに、鉱山周辺の広範囲にわたっての坑内に侵入する地表水及び地下水のしゃ断等に関する鉱害防止技術の調査研究を行った。

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