6 その他の対策
(1) 水銀、PCBに係る底質除去対策
水銀に係る底質汚染については、48年度に行った底質調査の結果によると、水銀を含む底質の暫定除去基準値を超えたものが27水域であり、また49年度に行った底質調査においても新たに3水域において暫定除去基準値を超えていた。これらの30水域については、50年12月末現在で底質の除去等の対策を終了した水域は千葉港市原前面入江(千葉県)、加納井路(東大阪市)等の17水域、対策を実施中の水域は酒田港(山形県)、大江川(名古屋市)等の5水域であり、その他の水俣湾(熊本県)、隅田川尾久橋下流(東京都)等の8水域については速やかに底質の除去等の対策が講じられることとなっている。なお、水俣湾においては、工事の実施及びその間における水質の監視について基本的な計画が定められ、近く工事の実施に取り掛かる予定になっている。
また、PCBに係る底質汚染については、47年度から49年度までに行った底質調査の結果によると、PCBを含む底質の暫定除去基準値を超え、底質の除去等の対策を講ずる必要があると推定される水域は、全国で92水域であった。これらのうち50年12月末現在で、詳細調査の結果から対策を行う必要がないと判明した水域は、6水域、対策を終了した水域は敦賀港(福井県)、大分川(大分県)等の25水域、対策を実施中の水域は高砂西港(兵庫県)、市川大門都市下水路(山梨県)等の20水域であり、その他の京浜横浜港(横浜市)、堺川(北九州市)等の41水域については底質の除去等の対策の検討が進められている。
なお、汚染底質の除去に当たっては、既に定めた「底質の処理、処分等に関する暫定指針」に従い、二次汚染が発生しないよう汚染物質等の監視を行いながら実施されている。
また、50年度においては、48年度全国環境調査の対象水域のうち、総水銀にあっては5ppmから1ppm程度の水銀が検出された底質のある水域、PCBにあっては、10ppmから1ppm程度のPCBが検出された底質のある水域において補完調査を実施中であり、この結果問題があれば所要の対策が講じられることとなっている。
(2) 農業用水水質汚濁対策
水質汚濁による農業被害に対処するため、引き続き50年度においても全国的に水質汚濁に係る農業被害実態調査を実施するとともに、都道府県が被害地区における農業用水の水質汚濁の現状は握と被害防止対策の推進に資するため実施する農業用水水質調査について助成した。また、近年都市汚水による農業被害が急激に増加していることに対処するため、被害地区に現地調査ほ場を設置し、被害防止対策基準の作成を行う都市汚水等に係る対策基準調査等を実施するとともに、被害防止対策の必要な地区において、水源転換、用排水路の分離等を内容とする水質障害対策事業を引き続き実施した(50年度新規11地区、継続41地区)。
(3) 水産関係公害防止対策
水銀、PCB等による魚介類の汚染状況調査、埋立て・温排水の生物に与える影響調査及び沿岸水産資源開発区域の環境調査により現状をは握するとともに、全国的な公害調査指導員の配置、漁場のしゅんせつ等による生産力の復旧等公害被害防止及び指導体制の整備のため助成を行った。また、赤潮防止対策として、赤潮情報交換事業、赤潮被害防止施設設置事業、ヘドロの回収除去技術の事業化試験事業、ヘドロのたい積分布状況、たい積量・性状等につき基礎調査事業を実施した。更に、漁船内で生じた廃油の処理を行うための廃油処理施設の整備、漁港の水域内にたい積したヘドロその他の有害物質の排除、港内清掃のための清掃船の建造及び港内にある持主不明の沈廃船の処理について助成した。
水産加工関係公害防止については、公害防止施設の管理の万全を期するため、公害防止管理者管理基準を作成するほか、水産物産地流通加工センター形成事業において共同排水処理施設の建設等を指導・助成した。
(4) 被害救済対策
被害漁業者救済対策として、引き続き、「水銀等による水産動植物の汚染に係る被害漁業者に対する資金の融通に関する特別措置法」等により、融資機関の融資に対する利子補給補助を行うとともに、漁業共済のうち、養殖共済の赤潮特約に係る掛金の補助を行った。
また、油濁による漁業被害のうち相当部分を占める原因者不明の油濁被害については、従来救済の途がなかったが、50年3月3日に財団法人漁場油濁被害救済基金が設立され、暫定的な救済措置が講じられることになった。これは、国、都道府県、漁業団体及び産業界が各々拠出して、事業主体である基金が、被害漁業者に対して、漁業被害に係る救済金の支給、油の防除、清掃費に対する助成を行うものであり、50年度から、これらの事業を実施している。
(5) 防衛施設周辺における対策
防衛施設の設置及び運用又は自衛隊及び駐留米軍の特定行為により防衛施設周辺の水質汚濁が生じないよう関係施設の整備を行うとともに、水質汚濁によって農業、漁業等の経営に支障を生じた場合には、「日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊等の行為による特別損失の補助に関する法律」及び「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律」に基づき、次のとおり諸施策を講ずることとしている。なお、防衛施設のうち、駐留米軍に係るものについては、必要な立入調査等を行うことにより周辺の環境保全のための適切な対策が講じられるよう措置している。
ア 自衛隊及び駐留米軍の特定行為による水質汚濁について防止等の工事を行う者に対し、その費用を補助するとともに、防衛施設の設置及び運用による水質汚濁について住民の生活又は事業経営上の障害の緩和に資する生活環境施設等を整備する地方公共団体に対しその費用の一部を補助している。
イ 自衛隊及び駐留米軍の特定の行為による水質汚濁により被った農業、漁業等の経営上の損失に対し補償している。